(読み)あかね

精選版 日本国語大辞典 「茜」の意味・読み・例文・類語

あか‐ね【茜】

〘名〙
アカネ科の多年草。本州以西の山野に生える。茎はつる性の角柱形で、とげが逆向きについている。根は太く、黄赤色で乾くと暗紫色。葉は長さ三~七センチメートル、幅一~三センチメートルぐらい。長い葉柄をもち、同形の托葉(たくよう)一対と四枚で輪生状につく。夏から秋に淡黄緑色の小花が円錐形に集まって咲く。実は球形で黒く熟す。根はアリザリンプルプリンなどの色素を含み、赤黄色の染料とするほか、漢方では茜根(せんこん)といい、利尿止血解熱、強壮剤として用いられる。根が赤黄色をしているのでこの名がある。あかねかずら。べにかずら。《季・秋》〔本草和名(918頃)〕
② 色名の一つ。茜の根から採った染料およびその染色の名で、紫色を帯びた赤黄色。茜染め。〔十巻本和名抄(934頃)〕
落窪(10C後)二「よき帛、糸、綾、あかね、蘇枋、くれなゐなど、おほく奉り給へれば」
③ 茜色に照り映えた雲。あかねぐも。〔書言字考節用集(1717)〕
暗赤色に染めた安物の木綿布。よく田舎女の腰巻に用いられ、そこから転じて田舎娘をいう。
※雑俳・柳多留‐八(1773)「田舎いろあかねと浅黄まくり合」

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デジタル大辞泉 「茜」の意味・読み・例文・類語

あか‐ね【×茜】

《「赤根」の意》
アカネ科の蔓性つるせいの多年草。本州以南の山野に多い。茎は四角柱でとげがある。葉は心臓形で先がとがり、4枚ずつ輪生するように見えるが、2枚は托葉たくよう。晩夏、多数の淡黄緑色の小花を円錐状につける。根は染料や薬用。 秋》「―の実つぶせし指を妻示す/秋を」
1の根からとった赤色の染料。成分はアリザリン
茜色」の略。
[補説]書名別項。→アカネ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「茜」の意味・わかりやすい解説


あかね

山野に自生するつる性の多年生草本アカネの根から得られる赤色の染料。日本の茜Rubia cordifoliaは、古く奈良時代から用いられてきたもので、同じ赤系統の染料である紅(べに)、蘇芳(すおう)よりも堅牢(けんろう)な色を染め出す。プルプリンを含む代表的な媒染染料で、媒染には、アルミニウム、すなわちアルミニウムを含有する植物、ニシコリ、ツバキサカキなどの灰が用いられた。これに比べて効率のいい金属性アルミニウム(ミョウバン)も文明度の高い地域から使用が始まり、現在では世界の各地で用いられている。茜染めの染法は、一般的には被染物へまず媒染剤を施して、その後に染料に浴染する先(さき)媒染の方法が多く行われている(インドインドネシアなど)。日本で現在行われている伝統的な方法は、まずニシコリの灰汁(あく)に糸または裂(きれ)を120回もつけては干して十分媒染剤を浸透させたものを、アカネの根を煎(せん)じた染汁に浸し、所望の濃さを得るまで繰り返して染め上げる。

 伝統的な茜染めで世界的に有名なのは、インドおよびインドネシアの茜染めで、染料はインドアカネMorinda citrifoliaの根が用いられる。とくに近年までその染法がミステリーといわれていたインドの赤indian redやインドネシアのバリ島のテンガナンの茜染めは、植物性または動物性の油脂、皮革なめしに用いられるタンニン性の物質を加えたりして、何か月もかけて行われるという。

[山辺知行]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「茜」の意味・わかりやすい解説


あかね
madder

アカネの根の汁を原料とする染料。主として絹を染めるのに用いられた。暗赤色。エジプト,インドでも古くから用いられており,日本でも『古事記』『万葉集』に茜染めを詠んだ歌があるので,古くから用いられていたことがわかる。『延喜式』に,茜は伊賀,伊勢,相模,武蔵,常陸,加賀,越中,美作,安芸,周防,日向などの諸国から貢進されたとある。中宮寺所蔵の『天寿国繍帳』や,正倉院宝物などに茜染めがみられ,平安時代の遺品にも多い。江戸時代には蘇芳 (すおう) と刈安を混合して用い茜染めに代用した。明治以後,合成染料が輸入されたために使用されなくなった。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「茜」の解説

茜 (アカネ)

学名:Rubia argyi
植物。アカネ科のつる性多年草

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