茨木(読み)イバラキ

デジタル大辞泉 「茨木」の意味・読み・例文・類語

いばらき【茨木】[歌舞伎舞踊]

歌舞伎舞踊長唄河竹黙阿弥作詞、3世杵屋正次郎作曲。明治16年(1883)東京新富座初演茨木童子の伝説に取材したもの。
[補説]地名別項。→茨木

いばらき【茨木】[地名]

大阪府北部の市。慶長年間(1596~1615)は片桐且元かたぎりかつもと城下町江戸時代宿場町として発展。電気機械化学工業が盛ん。人口27.5万(2010)。
[補説]作品名別項。→茨木

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精選版 日本国語大辞典 「茨木」の意味・読み・例文・類語

いばらき【茨木】

[一] 大阪府北部の地名。片桐且元の城下町だったが、大坂の陣後は廃城。江戸時代は農産物集散地として発展した。昭和二三年(一九四八市制
※雑俳・川柳評万句合‐宝暦一二(1762)義四「いはらきは知恵をふるって元直にし」
[三] 歌舞伎所作事。松羽目物。長唄。河竹黙阿彌作詞。三世杵屋正次郎作曲。明治一六年(一八八三)東京新富座初演。茨木童子が、渡辺綱の伯母に化けて、切られた片腕を取り返すという筋。新古演劇十種の一つ。

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改訂新版 世界大百科事典 「茨木」の意味・わかりやすい解説

茨木[市] (いばらき)

大阪府北東部の市。1948年市制。人口27万4822(2010)。北部は北摂山地に属する低い山地,中・南部は千里丘陵を除けば安威川,淀川のつくった平野である。山麓一帯には継体天皇陵紫金山古墳,将軍山古墳などの三島古墳群があり,茨木川北東岸には中川清秀,片桐且元によって城下町が建設された。城郭は短期間で廃されたが,その後も三島地方の中心地となってきた。JR東海道本線と阪急電車によって大阪から約20分の位置にあるため昭和30年代から松下電器,東芝,専売公社(現,日本たばこ産業),東洋製缶,サッポロビールなどの工場進出に続いて住宅開発と大阪市からの大学・学校の移転・新設が進み,人口急増をまねいた。名神高速道路茨木インターチェンジ,大阪中央環状線などの道路交通条件にも恵まれ,工業生産も電気機械を中心に発展している。北大阪流通団地など流通・倉庫施設の進出も近年著しい。総持寺,忍頂寺,仏照寺,東本願寺茨木別院や史跡郡山宿本陣があり,北部の千提寺(せんだいじ),下音羽は隠れキリシタンの里として知られる。
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茨木 (いばらき)

歌舞伎舞踊。長唄。新古演劇十種の一つ。1883年4月東京新富座初演。作詞河竹黙阿弥,作曲3世杵屋(きねや)正次郎,振付初世花柳寿輔ほか。配役は茨木童子を5世尾上菊五郎,渡辺綱を初世市川左団次。1870年(明治3)杵屋勘五郎作曲の《綱館》に基づいて作られた松羽目物であるが,能・狂言の作品からの移入でない点が珍しい。二通りの演出がある。一つは6世梅幸型の舞台装置のある《綱館》式と,いま一つは6世菊五郎型の松羽目式。源頼光の四天王の一人渡辺綱が,羅生門で茨木童子の片腕を斬る。童子は,綱の伯母真柴に化けて取り戻しに来る。ここでは右腕だけで踊るのが技量のいるところ。見せてもらった腕を奪い,たちまち悪鬼となって逃れる。後段は茨木と綱の立回りのあと,童子は正体をあらわし花道を引っ込む。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「茨木」の意味・わかりやすい解説

茨木
いばらき

歌舞伎(かぶき)舞踊劇。長唄(ながうた)。1幕。河竹黙阿弥(もくあみ)作。羅生門(らしょうもん)の鬼神伝説に取材、能にはない曲を能形式の松羽目物(まつばめもの)に仕立てたもの。1883年(明治16)4月東京・新富座で5世尾上(おのえ)菊五郎の茨木童子、初世市川左団次の渡辺綱(わたなべのつな)により初演。3世杵屋(きねや)正次郎作曲、初世花柳寿輔(はなやぎじゅすけ)振付け。羅生門で鬼神茨木童子の片腕を切り取った渡辺綱が物忌みで固く門戸を閉じているところへ、伯母真柴(ましば)が訪れる。酒宴ののち、鬼の腕を見せてくれと頼んだ伯母は、すきをうかがって腕を奪うや、たちまち悪鬼の正体を現して飛び去る。5世菊五郎は『土蜘(つちぐも)』に次いで「新古演劇十種」に選定。6世尾上梅幸(ばいこう)、6世菊五郎が継承し、その後も多くの人が上演している。面会を断られた伯母が門の外で綱を養育した昔を物語る振り、酒宴での舞、鬼の本性を現すところ、後ジテの片手六方の引っ込みなどが見せ場。なお、6世梅幸は同工異曲の長唄『綱館(つなやかた)』を使って演じた。

[松井俊諭]

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百科事典マイペディア 「茨木」の意味・わかりやすい解説

茨木【いばらき】

長唄所作事。3世杵屋正次郎作曲。河竹黙阿弥作詞。初世花柳寿輔ほか振付。1883年初演。新古演劇十種の一つ。羅生門で渡辺綱に片腕を切り取られた茨木童子が,おばに化けて綱を油断させ,まんまと腕を取り戻す筋で,11世杵屋六左衛門作の《綱館(つなやかた)》(1869年)の影響を受けて作られた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「茨木」の意味・わかりやすい解説

茨木
いばらき

歌舞伎舞踊曲。長唄。 1883年4月東京新富座,5世尾上菊五郎,1世市川左団次初演。河竹黙阿弥作,3世杵屋正次郎作曲,1世花柳寿輔ほか振付。新古演劇十種の一つ。松羽目物であるが能に原拠はなく,今日伝わるものは長唄『綱館』を下敷きとする。鬼の腕を斬り,物忌をする渡辺綱のもとへ,伯母真柴に化けた茨木童子が腕を取戻しにやってくる。前ジテの老婆と後ジテの鬼の凄味が好対照をなす。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「茨木」の解説

茨木
(通称)
いばらき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
兵四阿屋造
初演
寛保1.7(江戸・中村座)

茨木
〔長唄〕
いばらき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
河竹黙阿弥
初演
明治16.4(東京・新富座)

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動植物名よみかた辞典 普及版 「茨木」の解説

茨木 (イバラノキ)

植物。バラ科の落葉小低木,園芸植物,薬用植物。ノイバラの別称

茨木 (バラノキ)

植物。マメ科の落葉高木,園芸植物,薬用植物。サイカチの別称

茨木 (バラノキ)

植物。ウコギ科の落葉高木,薬用植物。ハリギリの別称

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世界大百科事典(旧版)内の茨木の言及

【四天王物】より

…江戸歌舞伎では顔見世でよく上演されたが,顔見世狂言として固定化して用いられるようになるのは,1729年(享保14)江戸市村座の《長生殿白髪金時》あたりからだといわれる。このほか,明治になって《茨木》《戻橋》などの舞踊が作られた。 なお,この四天王物の中から派生した作品群に,〈土蜘物〉〈山姥物〉がある。…

【羅生門】より

…シテである鬼神の役は一言も発しない。長唄舞踊《茨木》などの原拠。【横道 万里雄】。…

※「茨木」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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