荒尾(市)(読み)あらお

日本大百科全書(ニッポニカ) 「荒尾(市)」の意味・わかりやすい解説

荒尾(市)
あらお

熊本県北西部にある工業都市。1942年(昭和17)荒尾町と平井(ひらい)、有明(ありあけ)、府本(ふもと)、八幡(やわた)の4村が合併して市制施行。1955年(昭和30)清里村(一部)を編入。JR鹿児島本線、国道208号などが通じている。市域は花崗(かこう)岩の山地堆積(たいせき)岩(新生代)、段丘礫層(れきそう)の丘陵有明海に臨む沖積低地からなる。寒村であった荒尾の発展の契機は、近代的な設備を整えて開始(1902)した三井三池炭鉱(みついみいけたんこう)(1997年閉山)万田坑(まんだこう)の採炭にあり、続く四山坑(よつやまこう)の開発、火薬工場の進出、さらに北接する大牟田(おおむた)市(福岡県)の石炭化学工業の発展によって、鉱工業都市としての地位が確立した。鉱山閉山後の現在、旧万田坑の施設は国の重要文化財・史跡に指定されている。また、かつての火薬工場用地や、炭鉱管理用地には、紡績、食品などの製造業、総合レジャー施設(三井グリーンランド)、さらに有明海埋立地には、合板、アルミなどの製造業を誘致し、石炭産業なきあとの地元雇用機会の増大に努めている。しかし、それも十分ではなく、従前にも増して、大牟田市への労働力供給地としての性格を強めている。また、鉱工業の急伸の陰で目だたなかった丘陵、低山地のナシ・ミカン栽培は、1960年代初頭から主産地化し、一部では観光果樹園にもなっている。そのほか、海岸の埋立て、赤ぐされの頻発などによって衰退し始めたノリ養殖は、浮き流し式網ひびの普及で、引き続き産地としての地位を得ている。観光地に小岱(しょうたい)山や赤田公園がある。面積57.37平方キロメートル、人口5万0832(2020)。

[山口守人]

〔世界遺産の登録〕2015年(平成27)、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「明治日本の産業革命遺産 製鉄製鋼造船、石炭産業」の構成資産として、三池炭鉱万田坑、三池炭鉱専用鉄道敷跡が世界遺産の文化遺産に登録された。

[編集部]

『麦田静男著『荒尾市話』第1、2巻(1967・荒尾市)』『『荒尾近代史』(1969・荒尾市)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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