日本大百科全書(ニッポニカ) 「萎黄病(作物)」の意味・わかりやすい解説
萎黄病(作物)
いおうびょう
作物の葉が萎縮(いしゅく)して黄色になり、草丈が低くなる病気で、欧米ではイエロースyellows(黄色になる)といわれる。野菜類、草花など多くの作物に発生し、被害も大きい。病原は作物の種類によって異なり、大別すると、ウイルス、ファイトプラズマ、菌類と多岐にわたっている。
ウイルスによっておこるものには、テンサイ(サトウダイコン)の萎黄病がある。北海道の各地で発生し、葉の黄化が著しく、生育が悪くなる。病原ウイルスはモモアカアブラムシによって伝搬される。
ファイトプラズマによっておこるものは、野菜類や草花類に多く、トマト、レタス、ニンジン、パセリ、ホウレンソウ、アスター、キンセンカ、コスモス、ニチニチソウなどの萎黄病がある。アスター萎黄病は欧米諸国や日本などで古くから発生が知られており、ウイルスが病原と考えられていたが、この病原がマイコプラズマによく似た微生物であることが明らかにされ、マイコプラズマ様微生物とよばれていたが、研究が進むにつれ、マイコプラズマとはかなり異なった性質を有することがわかり、1994年以降ファイトプラズマPhytoplasmaとよばれることになった。萎黄症状を示す多くの病気がファイトプラズマの寄生によっておこることが確認されている。これらファイトプラズマは、ウイルスと同じような発生生態を有しており、キマダラヒロヨコバイ、ヒメフタテンヨコバイなどのウンカ、ヨコバイ類で媒介される。テトラサイクリン系の抗生物質の施用によって病気は回復するが、農作物では経済的な面から実用的でないため、媒介虫であるウンカ、ヨコバイ類を薬剤によって殺し、感染を防止する方法がとられている。
菌類によっておこる萎黄病には、ダイコン、キャベツ、カリフラワー、イチゴなどの萎黄病がある。病原は土の中に生息しているフザリウム・オキシスポルムFusarium oxysporumという糸状菌で、ダイコン、キャベツなどの作物が播種(はしゅ)または植え付けされると、病原菌は根の傷口などから作物に侵入して道管部で繁殖する。このため初めは地上部とくに片側の葉の生育が停止して、黄色になる。病気が進むと、葉は落ちて茎だけが残り、のちには枯れる。ダイコンでは根の維管束部が黒く変色するので食用にならない。防除法としては、病気に強い品種を選んで栽培する、連作を避ける、蒸気あるいは薬剤で土壌消毒をするなどの方法がとられる。
[梶原敏宏]