葦・蘆・葭(読み)あし

精選版 日本国語大辞典 「葦・蘆・葭」の意味・読み・例文・類語

あし【葦・蘆・葭】

〘名〙
① イネ科の多年草。世界の温帯および暖帯に広く分布し、水辺に群生する。根茎は地中を長くはい、茎は中空の円柱形で直立し、高さ二~三メートルに達する。葉は長さ約五〇センチメートルの線形で縁がざらついており、互生する。秋、茎頂に多数の小花からなる穂をつける。穂は初め紫色で、のち褐色にかわる。若芽は食用となり、茎は葭簀(よしず)材や製紙の原料になる。根茎は漢方で蘆根(ろこん)といい、煎汁(せんじゅう)利尿止血解毒などのほか、嘔吐(おうと)をおさえるのにも用いられる。また、和歌では難波の景物として知られる。よし。《季・秋》
※古事記(712)下「射出づる矢、葦の如く来り散りき」
万葉(8C後)一四・三五七〇「安之(アシ)の葉に夕霧たちて鴨がねの寒きゆふへしなをばしのはむ」
俳諧・続猿蓑(1698)夏「白雨(ゆふだち)や蓮の葉たたく池の芦〈苔蘇〉」
讚岐典侍(1108頃)下「御前の御簾〈略〉あしとかいふ物かけられ」
③ 紋所の名。①の葉または葉と茎とをかたどったもの。葦葉、二つ葦葉、三つ葦葉、抱き葦などの種類がある。
[語誌](1)平安時代には、その「根」を忍ぶ恋の比喩として、また、その節と節の間の「よ」の短さを「臥し」や「夜」「世」にかけて嘆く気持が詠まれた。
(2)平安中期以降は葦の葉が注目され、「夕月夜潮みちくらし難波江のあしの若葉にこゆるしらなみ〈藤原秀能〉」〔新古今‐春上〕のように波と取り合わされた叙景歌となり、中世には秋から冬にかけての「葦の枯葉」が好んで歌われるようになり、「しをれ葦」「乱れ葦」などの歌語が生まれた。
(3)後世アシは「悪し」に通じるとして反対ヨシと呼ばれるようになる。

よし【葦・蘆・葭】

〘名〙 (「あし」が「悪(あ)し」に通じるのを忌んで「善(よ)し」にちなんで呼んだ語) =あし(葦)
▼よしの花《季・秋》
※嘉応二年住吉社歌合(1170)「伊勢島には浜荻と名づくれど、難波わたりにはあしとのみいひ、あづまの方にはよしといふなるが如くに」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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