薩南学派(読み)さつなんがくは

精選版 日本国語大辞典 「薩南学派」の意味・読み・例文・類語

さつなん‐がくは【薩南学派】

〘名〙 日本の朱子学の一学派文明年間(一四六九‐八七)に薩摩鹿児島に招請された禅僧桂庵玄樹にはじまる。後に、月渚(げっしょ)一翁などが出たが、江戸時代衰亡藤原惺窩(せいか)により京に招来され、京学として再生した。応仁文明の乱による、中央文化の地方伝播の一成果とされる。

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デジタル大辞泉 「薩南学派」の意味・読み・例文・類語

さつなん‐がくは【×薩南学派】

日本朱子学の学派の一。文明年間(1469~1487)に薩摩に招かれた五山の禅僧桂庵玄樹始祖とする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「薩南学派」の意味・わかりやすい解説

薩南学派
さつなんがくは

戦国末期から近世初期にかけて薩摩(さつま)地方(鹿児島県)に興隆した宋学(そうがく)(朱子学)の一派。この派の祖桂庵玄樹(けいあんげんじゅ)は周防(すおう)(山口県)に生まれ、京都五山に学び、1467年(応仁1)から73年(文明5)まで6年間、中国の明(みん)に渡って簡牘(かんとく)外交(手紙すなわち外交文書の往復を通じての外交)のことに従事するとともに禅と朱子学を学んだ。帰国後、石見(いわみ)(島根県)、肥後(熊本県)菊池氏のもとを経て1478年島津忠昌(ただまさ)の招きで薩摩に移り、禅儒として活躍した。儒においては新注学を講じ、わが国で初めて『大学章句』を刊行した。他方、禅の見性(けんしょう)と程朱(ていしゅ)の心法とを調和して薩摩武士の士風の形成に寄与した。『島陰(しまかげ)集』の著がある。桂庵の死後その流れを引く文之玄昌(ぶんしげんしょう)(1556―1620)が出て禅儒として活躍し、訓点(くんてん)のうえで桂庵の後を受けて文之点を完成した。2人はまた薩摩藩の対明外交を助けている。

[源 了圓]

『足利衍述著『鎌倉室町時代之儒学』(1932・日本古典全集刊行会)』『和島芳男著『日本宋学史の研究』(1962・吉川弘文館)』

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百科事典マイペディア 「薩南学派」の意味・わかりやすい解説

薩南学派【さつなんがくは】

応仁・文明の乱で地方に下った京都の禅僧桂庵玄樹が,1478年島津忠昌に招かれ薩摩(さつま)国に移り,一族や家臣に四書五経などを講じた。この玄樹を始祖とする儒学の学統を薩南学派という。その後も島津氏歴代の知遇を得て栄えたが,江戸時代中期には特色を失って衰退。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「薩南学派」の解説

薩南学派
さつなんがくは

戦国期~江戸初期,薩摩を中心に島津氏のもとで栄えた儒学の一派。1478年(文明10)禅僧桂庵玄樹(けいあんげんじゅ)が薩摩に招かれたのに始まる。古注が通用していた当時,朱子の新注を採用して四書五経を講じ,新注による「大学章句」を刊行。「桂庵和尚家法和訓」では訓点を改良するなど,島津家中の学問を促した。江戸初期の文之玄昌(ぶんしげんしょう)は,訓点をさらに改良するなどして同学派を発展させた。門弟の如竹はその訓点を施した「四書集註」などを江戸で刊行。訓点は広く知られるようになり,朱子学の興隆に寄与した。江戸中期以降,薩摩には他の派も導入されたため,独自性を失う。

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旺文社日本史事典 三訂版 「薩南学派」の解説

薩南学派
さつなんがくは

室町中期,桂庵玄樹が薩摩地方でおこした朱子学派の一派
1478年,薩摩国大名島津忠昌が桂庵玄樹を招き,この地で桂庵が出版したわが国最初の新註『大学章句』を,一族に講義させたのがこの門流の初め。当時旧註によっていたわが国では注目すべきことで,この学派から文之玄昌 (ぶんしげんしよう) が出て近世朱子学に影響を与えた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「薩南学派」の意味・わかりやすい解説

薩南学派
さつなんがくは

室町時代の朱子学派の一つ。文明 10 (1478) 年,島津忠昌に招かれた五山の禅僧,桂庵玄樹が薩摩国で朱子学を講じたのに始る。月渚玄得や文之玄昌らの学僧を生み,一派をなしたが,江戸時代に入って衰退した。

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