薩摩川内(市)(読み)さつませんだい

  • 薩摩川内

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

鹿児島県北西部にある市。2004年(平成16)川内市、薩摩郡の樋脇(ひわき)、入来(いりき)、東郷(とうごう)、祁答院(けどういん)の4町、里(さと)、上甑(かみこしき)、下甑(しもこしき)、鹿島(かしま)の4村が合併して成立。市域は東シナ海に注ぐ川内川の中・下流域と、その西方に浮かぶ甑島列島(こしきじまれっとう)(上甑島、中甑島、下甑島と小属島群)からなる。川内川流域には沖積平野の川内平野があり、盆地状の平野を取り囲む山地の縁にシラス台地が広がる。中心部の川内地区は北薩(ほくさつ)の交易の中心で、JR鹿児島本線、九州新幹線、第三セクター肥薩おれんじ鉄道(ひさつおれんじてつどう)が通じ、旧国鉄宮之城線(みやのじょうせん)はバス路線に転換。南九州西回り自動車道、国道3号、267号、328号が通り、川内川河口一帯は重要港湾に指定。甑島列島各地へはいちき串木野(くしきの)市の串木野港から定期船がある。
 川内平野を中心に旧石器時代からの遺跡が分布し、平野に面する台地上には古墳時代の集落跡も見られる。奈良時代、北西部にあった高城郡(たきぐん)は肥後国からの計画的移民によって建てられたと考えられ、薩摩国府、国分寺、元明天皇(げんめいてんのう)勅願所の泰平寺が置かれた。川内川河口の西海道網津駅(おうづのえき)は国府の外港としての役割を担った。中世には島津荘祁答院、入来院、東郷などに含まれ、千葉常胤(ちばつねたね)が地頭職に補任されていた。1247年(宝治1)鎌倉で起きた宝治合戦で三浦氏と姻戚関係にある千葉氏は失脚し、遺領は相模国の渋谷光重に与えられた。渋谷一族は薩摩国に下向して子孫は入来院氏、祁答院氏、東郷氏、高城氏などを称した。室町時代に薩摩国守護所が川内川下流南岸の碇山城(いかりやまじょう)に置かれ、薩摩国守護島津氏と渋谷氏一族は提携、あるいは抗争を繰り返した。永禄年間(1558~1570)の末には入来院氏らは没落または島津氏に降っている。
 1587年(天正15)豊臣秀吉軍が薩摩に侵攻、島津義久は降伏して旧領を安堵された。江戸時代は薩摩藩島津氏直轄領、北郷氏私領、入来院氏私領に分かれる。川内川流域には約10の麓(ふもと)(外城(とじょう))が置かれ、中・下流域は川内地方の水陸交通、商業の中心であった。河口の久見崎には船手、船間島には藩主の行館が置かれ、下流の向田には藩主の御仮屋や年貢米を納める御蔵などが設けられた。大坂蔵屋敷への輸送などで向田渡唐口(ととんくち)・白和(しらわ)・京泊などがにぎわった。
 農業は水稲生産が県内トップクラスで、茶、野菜、ミカン・キンカンなどの果樹栽培、ブロイラー、肉牛などの畜産も盛ん。甑島地区のカノコユリは特産として知られる。南部の八重山山麓(さんろく)にある鹿児島大学農学部付属入来牧場ではウシが放牧される。漁業は小型底引網やパッチ網(引網の一種)によるカタクチイワシの沿岸漁業や養鰻(ようまん)も盛んである。好漁場に恵まれる甑島列島ではキビナゴ漁のほか、定置網、一本釣り、真珠やカンパチなどの養殖も行われる。工業では中越パルプや京セラの大工場のほか多くの中小工場が立地し、年間出荷額や商業の販売額も県内有数である。川内川河口両岸には九州電力の火力発電所と原子力発電所がある。
 薩摩国分寺跡と清色城跡(きよしきじょうあと)は国指定史跡。清色城跡を中心とした入来麓武家屋敷群は中世から近世の景観を伝え国の重要伝統的建造物群保存地区に選定。エール大学教授朝河貫一(あさかわかんいち)が発掘した「入来院文書」は12世紀から近世に至る入来院氏の文書。新田神社(にったじんじゃ)は国指定重要文化財の銅鏡3面、新田神社文書などを所蔵。藺牟田(いむた)火山一帯は藺牟田池県立自然公園に指定され、火口湖の藺牟田池はラムサール条約登録湿地。国指定天然記念物に藺牟田池の泥炭形成植物群落、永利のオガタマノキ(ながとしのおがたまのき)、藤川天神の臥竜梅(がりゅうばい)(菅原神社(すがわらじんじゃ))、甑島列島のヘゴ自生北限地帯がある。温泉も多く、市比野(いちひの)温泉、藺牟田温泉、川内温泉、入来温泉、諏訪(すわ)温泉がある。
 国定公園に指定される甑島列島は溺(おぼ)れ谷や海食崖が多く、里町の集落は発達したトンボロ(陸繋(りくけい)砂州)上に形成されている。瀬々野浦(せせのうら)断崖、長目(ながめ)の浜で区切られた海鼠(なまこ)池や貝池などの潟湖(せきこ)(ラグーン)などの景勝地が多く、サンゴ礁の発達もみられる。下甑島で大晦日(おおみそか)の夜に行われる伝統行事「甑島のトシドン」は国指定重要無形民俗文化財であるとともに、ユネスコ(国連教育科学文化機関)登録無形文化遺産(2009年は単独で、2018年は拡張された「来訪神:仮面・仮装の神々」の一つとして登録)。また同島の鹿島断崖の藺落浦(いおとしうら)はウミネコの繁殖南限地である。釣り客や海水浴客などの観光客が多い。面積682.92平方キロメートル(鷹島などの面積は含まない)、人口9万6076(2015)。[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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