薬師恵日(読み)くすしえにち

改訂新版 世界大百科事典 「薬師恵日」の意味・わかりやすい解説

薬師恵日 (くすしえにち)

7世紀前半ころの廷臣生没年不詳。帰化系小氏の出身で推古朝に遣隋留学生として隋・唐に医術を学び,623年(推古31)に帰国して,大唐国は法式備わり定まれる珍しき国であるから,つねに通うべきであると報告した。のち630年(舒明2)に大仁冠位を帯びて,大仁犬上三田耜(みたすき)(犬上御田鍬)とともに第1回の遣唐使となり,654年(白雉5)にも大山下の冠位を帯びて遣唐副使となって渡航した。《続日本紀》天平宝字2年(758)4月己巳条によると,恵日はもと高句麗人で雄略朝に百済から渡来した徳来という才人(てひと)(技術者)の5世の孫で,大陸の医術を習得して薬師の姓を与えられ,子孫難波薬師を称したという。
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朝日日本歴史人物事典 「薬師恵日」の解説

薬師恵日

生年:生没年不詳
7世紀前半の渡来人。医恵日とも書く。百済から雄略朝に渡来した才伎徳来の五世孫で薬師。大唐学問生。遣唐副使。推古朝(593~628)に,唐に遣わされ医術を学び,帰国後薬師と号し,これを姓としたとある。推古31(623)年,新羅使と共に帰国,唐に留学している者の早期帰国および大唐国は法式備わり定まれる珍しい国であるので,常に通うべきだと建言した。以後も舒明2(630)年と白雉5(654)年に遣唐使として渡唐。なお舒明2年,唐に渡ったときの冠位は大仁(正五位相当)であるが,斉明1(655)年に帰国したときは大山下(従六位相当)で,何かの理由で降格されたとも考えられる。

(仁藤敦史)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「薬師恵日」の解説

薬師恵日
くすしえにち

医恵日とも。生没年不詳。7世紀の遣隋留学生・遣唐使。623年(推古31)新羅使(しらぎし)とともに帰国,在唐留学生の召還と唐との交流の必要を奏上した。630年(舒明2)に犬上御田鍬(いぬかみのみたすき)とともに遣唐使になった。冠位は大仁。帰国年次は不詳だが,654年(白雉5)には冠位大山下で再び遣唐副使になった。758年(天平宝字2)難波連(なにわのむらじ)への改姓を願いでた難波薬師奈良らによれば,祖の恵日は百済(くだら)に帰化し雄略朝に渡来した高句麗人徳来の5世孫で,唐で医術を学んだため薬師と号したという。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「薬師恵日」の解説

薬師恵日 くすしの-えにち

?-? 飛鳥(あすか)時代の遣唐使。
唐(とう)(中国)に留学して医術をまなび,薬師姓を称する。推古天皇31年(623)帰国して,唐との通交の必要性を建言。舒明(じょめい)天皇2年犬上御田鍬(いぬかみの-みたすき)とともに第1回の遣唐使となる。白雉(はくち)5年にも遣唐副使として入唐した。姓は医ともかく。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「薬師恵日」の意味・わかりやすい解説

薬師恵日
くすしえにち

百済から帰化した医人徳来の子孫。難波薬師ともいう。推古 16 (608) 年,小野妹子 (おののいもこ) の再度の訪隋に福因らと随行して中国に渡り,同 31年に帰国。白雉5 (654) 年にも遣唐使の一行に加わって大陸に渡り,医書として『病源候論』 (隋) ,『千金方』 (唐) を伝えたといわれている。

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世界大百科事典(旧版)内の薬師恵日の言及

【唐】より

…このときに倒されて地下に埋まったと考えられる《大秦景教流行中国碑》が明末に出土し,今は西安の陝西省博物館の碑林に陳列されている。隋唐美術【礪波 護】
【日本との関係】
 唐の建国後5年,623年(推古31)に新羅を経由して唐から帰国した留学生恵日(えにち)(薬師恵日(くすしえにち))らは,唐に滞在している留学生の召還と,〈かの大唐国は,法式備り定れる珍(たから)の国なり。常にかよふべし〉と進言した。…

【留学】より

…彼らは,二十数年から三十数年の長期間にわたって中国に滞在し,隋が滅び,唐が興ってくる中国の社会を実見して帰国し,大化改新に始まる律令国家の建設に大きな役割を果たした。唐の建国後間もなく帰国した留学生恵日(薬師恵日(くすしえにち))らの進言によって,遣唐使が派遣されることになると,道昭(どうしよう)など多くの学問生・学問僧が遣唐使に従って渡唐した。また7世紀には新羅に留学する僧も多く,行善(ぎようぜん)のように高句麗に留学する僧もあった。…

※「薬師恵日」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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