藤井寺市(読み)フジイデラシ

デジタル大辞泉 「藤井寺市」の意味・読み・例文・類語

ふじいでら‐し〔ふぢゐでら‐〕【藤井寺市】

藤井寺

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日本歴史地名大系 「藤井寺市」の解説

藤井寺市
ふじいでらし

面積:八・七〇平方キロ

府の南東部にあり、北を大和川、東を石川に囲まれる。北は大和川を隔てて八尾やお市、西は松原市・羽曳野はびきの市、南は羽曳野市、東は石川を隔てて柏原かしわら市に接する。市名は西国三十三所観音霊場第五番札所葛井ふじい(剛琳寺)にちなむ。

〔原始・古代〕

地形区分から市域をみると、羽曳野丘陵につながる洪積段丘・沖積段丘、石川の氾濫原に区分される。洪積段丘は普通高位・中位・下位に分けられるが、市域では中位と下位の段丘がみられ、旧石器時代から古墳時代に至る遺跡群が集中する。国府こう遺跡は旧石器・縄文時代から古墳時代に至る時期を中心とする複合遺跡で、国府台地の北東端に位置する。その出土土器は縄文前期の爪形文を特徴とし、屈葬状態での縄文人を主とする人骨多数が検出されている。また昭和三二―三三年(一九五七―五八)の調査では旧石器時代のナイフ形石器も検出され、国府型ナイフとよばれる。近くの船橋ふなはし遺跡はいま大和川河床にあたるが、ここでも縄文晩期の船橋式土器や櫛描きの簾状文・波状文を施した弥生中期の土器が出土した。縄文期の土器はさらに、土師の里はじのさと遺跡・はやし遺跡でも発見されている。

古墳時代には日本有数の古市ふるいち古墳群が営まれる。羽曳野市にかけて広がる古墳群で、おもだったものだけでも約二〇基、洪積段丘にV字形に並んで位置している(羽曳野市の→古市古墳群。築造年代(推定)は、五世紀のものが多く、仲津山なかつやま古墳(応神天皇皇后仲津姫命陵に治定)ミサンザイ古墳(仲哀天皇陵に治定)市野山いちのやま古墳(允恭天皇陵に治定)津堂城山つどうしろやま古墳は、全長二〇〇メートル以上の墳丘をもつ大型古墳である。大小二基の修羅(古代の運搬用木製そり)が昭和五三年、仲津山古墳の陪冢である三ッ塚みつづか古墳の周濠底部より出土した。中小古墳のなかでは長持山ながもちやま古墳から挂甲が発見され、アリやま古墳からは鉄刀・鉄鏃のほか鉄製農具が大量に出土、野中のなか古墳からは眉庇付冑など一一領の鉄製甲冑が出土した。いずれも五世紀頃の大型古墳の陪冢であるが、当時の大王や有力首長層が大量の鉄製品を保持していたことをうかがわせる。古市古墳群に関連する遺構として、古市大溝がある。大溝渠は前の山まえのやま古墳(現羽曳野市)付近から北西のミサンザイ古墳に至るまで、池・堤塘・水田などによってその水路がほぼ確かめられている(羽曳野市の→古市大溝。堺市の大仙だいせん古墳(仁徳天皇陵に治定)の南辺から東へ直進する丹比たじひ道は当市域の南端近くを通り、その北方を並行して走る大津道はおかの北を通って直進、船橋に至っていたとする説がある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「藤井寺市」の意味・わかりやすい解説

藤井寺〔市〕
ふじいでら

大阪府中南部,大和川中流部左岸の市。1959年藤井寺町と道明寺町が合体して藤井寺道明寺町が成立,翌 1960年美陵町に名称変更。1966年市制施行と同時に藤井寺市に名称変更。北部は石川,大和川が形成する平野。西部と南部は羽曳野丘陵に続く台地。中心市街地の藤井寺ではかつて製箔,紙器製造などの在来工業が,平野部では米作のほかイチジク栽培,台地ではモモ,ブドウなどの果樹栽培が行なわれていたが,1923年近畿日本鉄道南大阪線が通じてからは宅地化が進み,第2次世界大戦後は公営・公団住宅が多数建設され,大阪南郊の代表的な住宅衛星都市となった。1969年西名阪自動車道のインターチェンジが設けられ,工業地も形成された。南部で接する羽曳野市にまたがって古市古墳群(→古市)が広がり,仲哀天皇陵(→仲哀天皇),允恭天皇陵(→允恭天皇)のほか国史跡指定の古室山古墳,津堂城山古墳鉢塚古墳などが点在,2019年世界遺産の文化遺産に登録された。古社寺も多く,葛井寺(ふじいでら),道明寺,道明寺天満宮(いずれも国宝を所蔵)などがある。市域を西名阪自動車道,国道170号線,近畿日本鉄道南大阪線,道明寺線が走る。面積 8.89km2。人口 6万3688(2020)。

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