藤波の・藤浪の(読み)ふじなみの

精選版 日本国語大辞典 「藤波の・藤浪の」の意味・読み・例文・類語

ふじなみ‐の ふぢなみ‥【藤波の・藤浪の】

① 藤のつるが他の樹木などにからみつくところから、「思ひもとほる」にかかる。
万葉(8C後)一三・三二四八「藤浪乃(ふぢなみノ) 思ひもとほり」
② 「ただ一目」にかかる。かかりかた未詳
※万葉(8C後)一二・三〇七五「かくしてそ人の死ぬといふ藤浪乃(ふぢなみノ)ただ一目のみ見し人ゆゑに」
[補注](1)「万葉集」に「ふぢなみ」は一九例あるが、枕詞用法として確実な例は①②の挙例のみである。ただし、「藤浪(ふぢなみの)咲春野爾(さくはるののに)延ふ葛の下よし恋ひば久しくもあらむ」(一九〇一)も「咲」を「佐紀(さき)」という地名と考え、「ふぢなみの」を「サキ」を導く枕詞と見なし、「さきのはるのに」と訓む説もある。
(2)八代集でも「ふぢなみ」は一一例を数えるが、枕詞の用法はない。ただ、「古今集‐恋四」の「み吉野の大川野辺のふぢなみのなみに思はば我が恋ひめやは〈よみ人しらず〉」では、序詞の一部として「並み」を導き出している。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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