日本大百科全書(ニッポニカ) 「蝉丸(歌人)」の意味・わかりやすい解説
蝉丸(歌人)
せみまる
生没年不詳。平安初期の歌人。「これやこの行くも帰るも……」の歌で知られる伝説的人物で、その出生も宇多(うだ)天皇第八皇子敦実(あつざね)親王に仕えた雑色(ぞうしき)とも、醍醐(だいご)天皇の第四皇子とも伝える。盲目で琵琶(びわ)に長じ、逢坂山(おうさかやま)の関に庵(いおり)を結び、隠遁(いんとん)生活をした。源博雅(ひろまさ)はその琵琶に3年間師事をした、と伝える。盲目の琵琶法師たちの座である当道では、その職業の起源を語る蝉丸の伝説は長く重んじられてきた。謡曲『蝉丸』は、盲目のため帝(みかど)から逢坂山に捨てられた蝉丸と、狂い出た姉の逆髪宮(さかがみのみや)の琵琶の音にひかれての再会の物語である。蝉丸伝説は『今昔物語集』巻24や『平家物語』巻10にも記されている。
[渡邊昭五]