衝上断層(読み)つきあげだんそう(英語表記)thrust

翻訳|thrust

精選版 日本国語大辞典 「衝上断層」の意味・読み・例文・類語

つきあげ‐だんそう【衝上断層】

しょうじょう‐だんそう ショウジャウ‥【衝上断層】

〘名〙 上盤が、ゆるい角度で下盤の上にのし上がった状態断層逆断層一種。衝上。

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デジタル大辞泉 「衝上断層」の意味・読み・例文・類語

しょうじょう‐だんそう〔ショウジヤウ‐〕【衝上断層】

逆断層」に同じ。
上盤がゆるい角度で下盤の上にずり上がった状態の断層。45度以下のものをいう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「衝上断層」の意味・わかりやすい解説

衝上断層
しょうじょうだんそう
thrust
thrust fault

断層面が45度以下に傾斜した低角から中角の断層で、上側のブロック(上盤(うわばん))が、下側のブロック(下盤(したばん))に対して相対的にずり上がる変位をもつ断層。スラストとよばれることも多い。断層面を境として、上側に古い地層がのることになる。衝上断層は上へ上がる変位成分よりも、側方へ移動する変位成分が大きい。とくに低角で変位量の大きい衝上断層は押しかぶせ断層とよばれることがある。衝上して移動した上盤の岩体はナップとよばれる。ヨーロッパ・アルプスのグラールス衝上断層やスコットランドカレドニア造山帯のモイン衝上断層などは、変位量が40~50キロメートルにも達する大規模な衝上断層である。日本では仏像構造線延岡(のべおか)衝上断層などが知られている。北米アパラチア造山帯やコルディエラ造山帯などの大規模な造山帯の前縁部では、多くの衝上断層が密集して衝上断層帯をつくる。衝上断層帯で、新しい衝上断層が古い衝上断層の下盤側(前方)に形成される一連のものはインシーケンス衝上断層in-sequence thrust、この順番からはずれて新たに上盤側(後方)から形成されるものはアウトオブシーケンス衝上断層out-of-sequence thrustとよばれる。

[村田明広]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「衝上断層」の意味・わかりやすい解説

衝上断層
しょうじょうだんそう
thrust fault

逆断層のうち 45°以下の低角度で上盤が下盤にのし上がった状態の断層低角逆断層ともいう。造山運動において地殻が横方向に強い圧縮力を受けた場合にできやすく,ヒマラヤ山脈アルプスには規模の大きな衝上断層が数多く見られる。極端に強い褶曲作用によって褶曲軸横倒しになる横臥褶曲が進行し,地層が断裂した際に形成され,おおむね古い地層が新しい地層の上に重なる。世界遺産(自然遺産)であるスイス東部のグラールス衝上断層は貴重な標本であり,地質学研究上重要である。日本国内には富山県富山市と岐阜県飛騨市にまたがる横山楡原衝上断層,愛媛県砥部町の砥部衝上断層などがある。

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世界大百科事典(旧版)内の衝上断層の言及

【断層】より

断層地形
[断層の分類]
 (1)ずれ方による分類 上盤が下盤に対して相対的にずり下がった場合を正断層といい(図2-a),逆にずり上がった場合を逆断層という(図2-b)。逆断層のうち断層面の傾斜が45度以下の緩傾斜の場合を衝上(しようじよう)断層といい,さらに緩傾斜の場合を押しかぶせ断層と呼ぶこともある。これらの断層はいずれも傾斜移動成分をもつものであり,縦ずれ断層(傾斜移動断層)に区分される。…

※「衝上断層」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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