表・現・顕・著(読み)あらわす

精選版 日本国語大辞典 「表・現・顕・著」の意味・読み・例文・類語

あらわ・す あらはす【表・現・顕・著】

〘他サ五(四)〙 (形容動詞語幹「あらわ(露)」がもとになってできた語。「あらわにする」の意) 内にあるもの、隠れているものを、表に出すことをいう。
① 表に出して、はっきり示す。隠さないで見せる。おおやけにする。披露する。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)四「亦、相を現じて故(ことさら)に其の非を顕(アラハサ)じ」
平家(13C前)七「勅勘の人なれば、名字をばあらはされず」
仮名草子伊曾保物語(1639頃)中「つひにおのがもとの姿をあらはすによって」
② 隠さないで口に出して言う。包まず語る。打ち明ける。暴露する。
万葉(8C後)五・八五四「玉島のこの川上に家はあれど君をやさしみ阿良波佐(アラハサ)ずありき」
源氏(1001‐14頃)絵合「さ思ふ心なむありしなどは、えあらはし給はず」
読本春雨物語(1808)天津処女「謀反ある事を、〈略〉朝廷にあらはしたまへば」
③ 形あるものとして実現させる。新造する。また、神仏がその力で不思議な現象を示す。
※万葉(8C後)一八・四〇九四「遠き世に かかりし事を 朕(わ)御代に 安良波之(アラハシ)てあれば」
※続日本紀‐天平神護二年(766)一〇月二〇日・宣命「上(かみ)无き仏の御法(みのり)は〈略〉、必ず異(こと)奇験(くすしきしるし)を阿良波(アラハシ)授け賜ふ物にいましけり
※宇津保(970‐999頃)菊の宴「黄金(こがね)の堂建てん。金色の御かたあらはし奉らん」
④ (思想、感情などを)ことば、表情その他の手段で表現する。
※平家(13C前)七「木曾、真実意趣なきよしをあらはさんがために」
※続古今(1265)序「古(いにしへ)のことをも筆の跡にあらはしゆきて」
⑤ (著) 書きしるす。著述する。書物などを世に出す。
※燈前夜話(15C後)上「あらはす処の書内篇七篇十巻なり」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「嚮(さき)に著(アラワ)す男湯の浮世風呂」
⑥ あることを連想させる。象徴する。
※平家(13C前)一「沙羅双樹(しゃらさうじゅ)の花の色、盛者必衰(じゃうしゃひっすい)のことはりをあらはす」
⑦ 表面にそれと見えるように装う。見せかける。とりつくろう。
※仮名草子・伊曾保物語(1639頃)下「たばからばやと思ひて、死したる体(てい)をあらはして」
[語誌]平安時代の訓点資料あたりから助詞「を」との結びつきが強くなる。また、意味の面でも、「明らかにする」「公にする」といった原義から、「目に見えるようにする」「正体をあらわす」などの意味も派生する。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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