精選版 日本国語大辞典 「被・蒙・冠」の意味・読み・例文・類語
かぶ・る【被・蒙・冠】
[1] 〘他ラ五(四)〙 (「かがふる(被)」の変化した語)
① あるものを他のものでおおう。特に、笠、帽子、面などで頭や顔の表面をおおう。また、蒲団や着物を頭の方までかけておおうことにもいう。かむる。〔観智院本名義抄(1241)〕
② (水、ほこり、粉などを)上から浴びる。また、作物などが上まで水につかることにもいう。
③ (比喩的に用いて) 身に受ける。こうぶる。こうむる。
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「濫りに天恩を荷(カフリ)、喜びぬ所以」
(ロ) 傷、災禍、罰など、好ましくないものを受ける。
※龍光院本妙法蓮華経平安後期点(1050頃)二「或は当に堕落して火に焼かるることを為(カフ)らむ」
(ハ) 名称、あだ名などをつけられる。
④ 負担としてしょいこむ。損な役を引き受ける。責任を負う。
※雑俳・大黒柱(1713)「まふけるも又かぶるのも古道具」
⑤ 雑俳などで、前句や題に使われた語や文字を付句の初めにのせる句法。地口などにもいう。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「何の道にも式のあるもので〈略〉点取地口となれば冠(カブッ)た文字は点にならぬと申す」
⑥ 勢いよく上へ持ちあげる。ふりかぶる。
[2] 〘自ラ五(四)〙
② だまされる。いっぱい食う。
※夢声半代記(1929)〈徳川夢声〉サットー物語「其夜、閉場(カブ)ってから、楽長と小生フラスコの尻を焼いてると」
④ 大入り満員になることをいう、寄席芸人仲間などの語。
⑤ 写真で、フィルムの欠陥や露出過度などで画面がくもってぼやける。
⑥ 重なる。ダブる。「客層がかぶる」
⑦ (動詞の連用形に付けて補助動詞のように用いる) …することに失敗する。「言いかぶる」「買いかぶる」「踏みかぶる」
[語誌]奈良時代、平安時代初期に見える「かがふる」が「かうぶる」を経て成立した語。平安時代後半期以降、漢文訓読語として、和文語「かづく」に対応する語として用いられた。和文資料の「かぶる」は、いずれも神仏の恵みや徳、宣旨といった抽象的なものを受ける意で用いられ、布などでおおうといった具体的事例もある訓読文での意味と異なり、限定的である。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報