補陀落・普陀洛(読み)ふだらく

精選版 日本国語大辞典 「補陀落・普陀洛」の意味・読み・例文・類語

ふだらく【補陀落・普陀洛】

(Potalaka の音訳。光明・海島・小花樹と訳す) 仏語。インドの南海岸にあり、観音が住むといわれる山。この山の華樹は光明を放つとも、芳香を放つともいい、観音の浄土として崇拝された。補陀落山。補陀落世界。
※袋草紙(1157‐59頃)上「補陀落の南の岸に家居して今ぞ栄えむ北の藤波
日葡辞書(1603‐04)「Fudaracuni(フダラクニ) ワタル」 〔八十華厳経‐八〕
[語誌](1)「華厳経」によるとインドの南端にあり、「大唐西域記」では、南インドの海岸、マラカ山の東にあると注記されている。「陀羅尼集経‐二」の注では「海島」というとされている。一種の霊地として、仏教国の各地に、これにちなむ地名が生じた。日本でも観音の霊場に多くこの名が用いられている。
(2)観音の浄土にあこがれて、補陀落へ出帆する補陀落渡海という宗教現象が中古から中世にかけてあった。「熊野年代記」には熊野の那智山からの渡海が記され、「発心集」には土佐の国、「観音講式」では室戸岬、「とはずがたり」では足摺岬、他に熊本県玉名市などが補陀落渡海の霊地とされている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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