西川扇蔵(読み)にしかわせんぞう

精選版 日本国語大辞典 「西川扇蔵」の意味・読み・例文・類語

にしかわ‐せんぞう【西川扇蔵】

歌舞伎の劇場振付師、舞踊西川流家元
[一] 二世。初世仙蔵の門弟。宝暦一〇年(一七六〇)頃から江戸三座の振付師として活躍。「鷺娘」「関の扉」「双面」など名曲多数残す。文化一四年(一八一七)没。
[二] 四世。振付の名手として活躍し、西川流全盛を築いた。作品は「勧進帳」「鳥羽絵」「六歌仙」など。寛政九~弘化二年(一七九七‐一八四五

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デジタル大辞泉 「西川扇蔵」の意味・読み・例文・類語

にしかわ‐せんぞう〔にしかはセンザウ〕【西川扇蔵】

日本舞踊西川流の家元の名。初世(?~1756)は千蔵または仙蔵といったが、2世千蔵が扇蔵と改名、以後代々扇蔵を名のる。2世(?~1817)・4世(1792~1845)・5世(?~1860)が江戸の振付師として有名。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「西川扇蔵」の意味・わかりやすい解説

西川扇蔵
にしかわせんぞう

日本舞踊(宗家)西川流の宗家家元名。能の囃子(はやし)方から歌舞伎(かぶき)の鳴物師となり、舞踊にも通じていた西川仙蔵(1698―1756)を初世とし、今日まで10世を継承。

2世

(1718―1808)初世の門弟千蔵で、扇蔵と改める。宝暦(ほうれき)~文化(ぶんか)期(1751~1818)にかけての江戸歌舞伎の名振付師で、『鷺娘(さぎむすめ)』『鞍馬獅子(くらまじし)』『関の扉(せきのと)』などを残し、流儀を確立した。3世(生没年未詳)は2世の門弟が継ぐ。

4世

(1792―1845)3世藤間勘兵衛高弟藤間勘助が襲名。中村座・市村座の振付師を兼ね、振付けの名人とうたわれ、『勧進帳(かんじんちょう)』『藤娘(ふじむすめ)』『六歌仙(ろっかせん)』『靭猿(うつぼざる)』等々がある。門下から多くの名手を世に出した。5世(?―1860)は4世の高弟。6世は2世藤間勘右衞門(かんえもん)が養子となって継いだが離別。7世(1839―1923)は5世の実子。8世(1857―1923)は7世の女弟子で、扇造を名のる。9世(1906―1935)は8世の養女で、夭折(ようせつ)。

10世

(1928―2023)9世の実子が1935年(昭和10)に7歳で襲名した。1970年代からの活躍が目だち、泉徳右衛門(いずみとくえもん)(1924―1991)、花柳芳次郎(はなやぎよしじろう)(4世花柳寿輔(じゅすけ))との「三樹会」公演や、自身の会を続け、秀作『七騎落(しちきおち)』や『夢の富』などがある。平成期に入ってからは「素の会」も始め、回を重ねた。1990年(平成2)日本舞踊振興財団を設立。『鳴神(なるかみ)』『俊寛(しゅんかん)』などのアメリカ公演を企画するなど、日本舞踊の普及に尽力した。1989年紫綬褒章(しじゅほうしょう)、2009年(平成21)旭日小綬章(きょくじつしょうじゅしょう)受章。1999年には重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、2021年(令和3)文化功労者となった。

[如月青子]

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改訂新版 世界大百科事典 「西川扇蔵」の意味・わかりやすい解説

西川扇蔵 (にしかわせんぞう)

歌舞伎振付師。(1)初世(?-1756(宝暦6)) 鳴物師で仙蔵といった。(2)2世(?-1817(文化14)) 初世藤間勘兵衛の門弟で1760年(宝暦10)扇蔵と改名。初世中村仲蔵の所作事《鞍馬獅子》《関の扉》《高砂丹前》《勢い》《戻駕》《鬼次拍子舞》などの振付を手がけた。(3)3世 生没年不詳。2世の門弟巳之助がつぐ。(4)4世(1797-1845・寛政9-弘化2) 3世藤間勘兵衛の高弟勘助が3世扇蔵没後,1824年(文政7)扇蔵をつぎ,その才腕が西川流の全盛期をつくった。その振付には《お染》《宗清》《鳶奴》《三つ面子守》《六歌仙》《勧進帳》など佳品が多い。(5)5世(?-1860(万延1)) 高弟巳之助がつぎ,《乗合船》《操三番叟》などを残した。(6)6世 2世藤間勘右衛門が一時つぐ。(7)7世 5世扇蔵の実子巳之助がつぐ。(8)8世・9世 婦人がつぐ。(9)10世 9世尾村保子の実子広一郎がついだ。
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世界大百科事典(旧版)内の西川扇蔵の言及

【西川流】より

…日本舞踊の流派。初世西川千蔵(仙蔵)を流祖とする代々の西川扇蔵は歌舞伎振付師であったが,明治になり直系が絶えて歌舞伎と離れた。以後,家系は門弟筋によって継承され,現家元は10世扇蔵である。…

【羽根の禿】より

…作曲初世杵屋正次郎。振付2世西川扇蔵。江戸の初春,吉原の廓の門口で,禿が羽根つきをして無邪気に遊ぶ風景を描写。…

※「西川扇蔵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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