見・看・視・観・覧(読み)みる

精選版 日本国語大辞典 「見・看・視・観・覧」の意味・読み・例文・類語

みる【見・看・視・観・覧】

〘他マ上一〙 (「目(ま・め)」と同語源)
[一] 目によって物の外見、内容などを知る。また、それをもとにして考えたり判断したりする。
① 目にとめる。目で事物の存在を感じとる。
古事記(712)中・歌謡かもがと 我が美(ミ)し子ら かくもがと あが美(ミ)し子に」
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「ノウニン Esopo ヲ mite(ミテ)〈略〉ヲウキニ ワラウタ」
② 遠くに目をやる。ながめる。また、見物・観賞する。
※古事記(712)下・歌謡「潮瀬の 波折(なをり)を美礼(ミレ)ば 遊び来る 鮪(しび)鰭手(はたで)に 妻立てり見ゆ」
※枕(10C終)四一「祭のかへさ見るとて」
③ 目にとめてこれこれだと思う。物事をこうだと判断する。
万葉(8C後)五・八三九「春の野に霧立ち渡り降る雪と人の美流(ミル)まで梅の花散る」
※竹取(9C末‐10C初)「ぬぎおくきぬを形見とみ給へ」
④ 占う。また、予知する。
源氏(1001‐14頃)桐壺帝王のかみなき位にのぼるべき相おはします人の、そなたにてみれば、乱れうれふる事やあらむ」
人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)初「人相をよく観察(ミル)お方」
⑤ 悟り知る。わかる。
※彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「聴といふは理を察(ミル)ぞ」
※源氏(1001‐14頃)空蝉「わらはなれど、物の心ばへ、人のけしきみつべくしづまれるを」
⑥ よく注意して調べる。観察する。また、診断したり鑑定したりする。
※竹取(9C末‐10C初)「つばくらめをあまた殺してみるだにも腹になき物也」
徒然草(1331頃)七「命あるものを見るに、人ばかり久しきはなし」
※家(1910‐11)〈島崎藤村〉下「二人ばかり医者にも診(ミ)て貰ひましたがネ」
⑦ 文字に表現されたことを知る。読む。
※竹取(9C末‐10C初)「鉢の中に文あり。ひろげて見れば」
更級日記(1059頃)「心もとなく思ふ源氏を、一の巻よりして、人もまじらず、几帳の中にうちふして引きいでつつ見る心地」
[二] 物事を経験したり、物事や人に対して身をもって働きかけたりする。
① 経験する。ある物事を身に受ける。
※竹取(9C末‐10C初)「かかるわびしき目を見ず」
方丈記(1212)「四十あまりの春秋をおくれる間に、世の不思議を見る事、ややたびたびになりぬ」
② 人の気持意志、物の質などがどうであるかをためす。
平家(13C前)五「かう申せば、御辺の心をみんとて申などおもひ給か」
婦系図(1907)〈泉鏡花〉前「汽車の弁当でも試(ミ)給へ、東海道一番だよ」
③ 人と顔を合わせる。会う。
※万葉(8C後)一八・四一一六「都へに 参(まゐ)しわが背を あらたまの 年往きがへり 月かさね 美(ミ)ぬ日さまねみ」
※伊勢物語(10C前)八三「忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪ふみわけて君を見むとは」
④ (③から転じて) 男女の交わりをする。また、夫婦として暮らす。
※竹取(9C末‐10C初)「此女見では世にあるまじき心ちのしければ」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「藤壺の御有様をたぐひなしと思ひきこえて、さやうならむ人をこそみめ」
⑤ 世話をする。面倒をみる。
※落窪(10C後)四「故殿の御代りには、君達、北の方をこそはみ奉り仕うまつらめ」
※金刀比羅本平治(1220頃か)下「命あらば母をみるべし」
⑥ ある行為・作用が実現する。
※女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉九「冬季暖房のおかげで寒さ知らずに働けるに反し、夏季になって温度の上騰を見ることは甚だしい」
[三] 補助動詞として用いる。
① (動詞の連用形、または、それに助詞「て」を添えた形に付いて) ためしに…する。
※古今(905‐914)秋上・二二三「折りてみば落ちぞしぬべき秋はぎの枝もたわわにおける白露〈よみ人しらず〉」
※土左(935頃)発端「男もすなる日記といふものを、女もしてみんとてするなり」
② (動詞の連用形に助詞「て」を添えた形に付いて) 上に付いている動詞の表わす動作・作用が実現する。
(イ) 下に助詞「ば」「と」を伴ったり、放任・命令表現を伴ったりして、ある動作が実現することを仮定する場合。もし…したら。
※人情本・花筐(1841)三「旦那から手限(てぎれ)をとるにも、此様な事が知れて見ると、誠に邪魔になるからサ」
(ロ) 下に助詞「ば」などを伴って、ある動作の実現したことを理由として述べる場合。…したから。…である以上は。
※人情本・いろは文庫(1836‐72)二七「互ひに斯う約束をして見れば、浮気な色恋ぢゃアなし」
(ハ) 下に助詞「ば」「と」を伴って、ある結果や結論の出てくるもとになる動作を述べる場合。…すると。
※人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)三「ホンニ考へて察(ミ)ると、はかない様だネへ」
③ (名詞に助詞「で」を添えた形に付いて) …であるの意を表わす。
(イ) 下に助詞「ば」「と」を伴って、理由として述べる場合。…だから。
※人情本・いろは文庫(1836‐72)三五「後家で見れば何も爾程(さほど)の不義といふでもあるまい」
(ロ) 下に放任・命令表現を伴って仮定の意を表わす場合。もし…だったら。
※洒落本・二日酔巵觶(1784)「男でみたがいい、弟分にして連て歩くに」
※滑稽本・七偏人(1857‐63)初「あれが外の者でみねへ、何様(どんな)に気の毒だか知れやアしねへ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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