言葉(読み)ことのは

精選版 日本国語大辞典 「言葉」の意味・読み・例文・類語

こと‐の‐は【言葉】

〘名〙
ことば。言語。
※竹取(9C末‐10C初)「まことかと聞きて見つればことのはを飾れる玉の枝にぞありける」
和歌では、特に木の葉に掛けて用い、愛を伝えることばや人のうわさなどの意を表わす。
古今(905‐914)恋五・七八二「今はとてわが身時雨にふりぬれば事のはさへにうつろひにけり〈小野小町〉」
③ 和歌。うた
※古今(905‐914)仮名序やまとうたは、ひとこころをたねとして、よろづのことの葉とぞなれりける」

けと‐ば【言葉】

〘名〙 「ことば(言葉)」をいう上代東国方言。
万葉(8C後)二〇・四三四六「父母が頭かきなで幸(さ)く有れて言ひし気等婆(ケトバ)ぜ忘れかねつる」

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デジタル大辞泉 「言葉」の意味・読み・例文・類語

こと‐ば【言葉/詞/辞】

人が声に出して言ったり文字に書いて表したりする、意味のある表現。言うこと。「友人の―を信じる」
音声や文字によって人の感情・思想を伝える表現法。言語。「日本の―をローマ字で書く」
文の構成要素をなす部分。単語。また、語句。「―が豊富だ」「一々の―を吟味して話す」
言い方。口のきき方。口ぶり。言葉遣い。「荒い―」「―に注意しなさい」
必ずしも事実でないこと。言葉のあや。
ちりを結んでと言うたは、―でござる」〈狂言記・箕被〉
(詞)謡い物語り物の中で、節をつけない非旋律的な箇所。
(詞)物語・小説などの中で、会話の部分。
(詞)歌集などで、散文で書かれた部分。
[下接語]合い言葉あずま言葉遊ばせ言葉遊び言葉天地あめつちことば田舎言葉忌み詞入間詞いるまことば入れ詞歌詞うたことば売り言葉絵詞えことば江戸言葉沖言葉買い言葉替え詞書き言葉隠し言葉掛け詞かざし詞重ね言葉京言葉口言葉国言葉繰り言葉くるわ言葉御所詞ざあます言葉逆さ言葉里言葉為做しなせ言葉正月言葉序詞じょことば女中詞捨て言葉制の詞添え言葉通り言葉土地言葉なぞ言葉・逃げ言葉・女房詞挟み詞花言葉話し言葉早口言葉早言葉囃子詞はやしことば流行はやり言葉武士詞べいべい言葉褒め言葉枕詞まくらことば御国詞みくにことば武者詞文字言葉休め言葉奴詞やっこことば山言葉大和言葉吉原言葉六方ろっぽう
[類語]言語言辞言の葉
[補説] 
2014年6月に実施した「あなたの言葉を辞書に載せよう。2014」キャンペーンでの「言葉」への投稿から選ばれた優秀作品。

◆嘘を真実に、真実を嘘に変化させることができる道具。
俺の空Rさん

◆音にすれば思いを伝えられ、視界に入れれば考えが生まれ、飲み込めば大人になるもの。
kei_koさん

◆一度発すると責任がつきまとうもの。発した言葉には責任を持つこと。良くも悪くも相手の心に残るもの。
yaaaaさん

◆感情または思考を形に表す手段。
タカノリさん

◆いつも想いより後から出てくるもの。
なつこさん

◆口から発するもの。文字として綴るもの。心に刻むもの。
月のしずくさん

◆読み、書き、話すことで世界中の人とコミュニケーションがとれる人間の進化の過程で得たツール
ペラペラさん

◆見ず知らずの他人の一言で、人生が救われる。たった一行の文字で、考え方が生まれ変わる。
REINAさん

◆ときどきナイフ、ときどき包帯。
あるとママさん

けと‐ば【言葉】

「ことば」の上代東国方言。
「父母がかしらかきなでくあれて言ひし―ぜ忘れかねつる」〈・四三四六〉

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改訂新版 世界大百科事典 「言葉」の意味・わかりやすい解説

言葉 (ことば)

〈ことば〉という日本語の原型は〈こと(言)〉であり,〈ことば〉はその派生語として,おそらく7,8世紀のころより用いはじめられたらしい。最古の日本語文献である《古事記》《万葉集》の場合,〈ことば〉は数例しかみられないのに対し,〈こと〉は〈よごと(寿詞)〉〈かたりごと(語り事)〉〈ことあげ(言挙げ)〉〈ことわざ(諺)〉,また〈ことほぐ(言祝ぐ)〉〈ことどう(言問う)〉などの複合語形で多数みいだされるからである。そしてこれらの〈こと(言)〉は,意味的に〈こと()〉と区別することがほとんどできない。たとえば〈ことあげ〉〈ことどう〉などが〈言挙・事挙〉〈言問・事問〉と両様に表記されている点にその消息がうかがえる。つまり古くは名辞としての〈こと〉と現象としての〈こと〉はなお未分化であった。そこから古代地名伝説のひとつの型--特定の土地の命名者がただちにその所有者,支配者となるという話柄も生まれてきている。

 もっともすべての言語が〈事〉と一体視されたわけではなかった。一般日常の言語行為は〈いう〉で示されているが,それに対して〈言〉〈言挙げ〉〈言立つ〉などは〈いう〉とは区別される改まった言葉づかいに属し,そうした〈言〉においてのみ〈事〉をなしとげる呪力を持つと信じられたのである。〈ことだま(言霊)〉とはこのような特定の言語への信頼をあらわした語で,おそらく〈ことだま〉は神授のものと意識されていたであろう。

 したがって,〈事〉と区別された〈言〉のみを意味する〈ことば〉という語の出現には,〈言・事〉の分化,言語そのものへの自覚の高まりが示されている。またそうした自覚は,従来の音声言語に対するあらたな書記言語(文字)の普及により促されたとみられる。

 〈ことば〉の語義は〈言の端〉とも〈言の葉〉とも解されるが,この語のその後の通用は,たとえば〈うた〉の世界において多少とも聖なる由緒を伴う共同体や宮廷の歌謡が世俗化,自由化され,個の抒情詩に展開してゆく過程とほぼ重なっていたようだ。10世紀初頭の《古今和歌集》仮名序には,〈やまと歌は,人の心を種として,よろづの言の葉とぞなれりける〉とあり,そこに〈言〉=〈事〉の原始的対応にかわる,〈人の心〉と〈ことば〉の対応がみいだされる。

 なお〈言の葉〉は〈ことば〉の歌語にあたり,12世紀ごろまでの識字層においては,前者を雅言,後者を俗語の意に使いわけていた形跡があるが(《源氏物語》など),以降そうした区別はうすれてゆき,〈ことば〉の語はおおむね現代に等しい用法,語義が定着するにいたる。ただ社会進化のなかで言語体系の記号化が強められ,〈ことば〉は〈うわべの……,口先きだけの……〉という含意を増しつつある形勢がうかがえる。一般に詩人,文学者の言語・文字による営為を,そうした状況への批評と位置づけることが可能だが,たとえば宮沢賢治が〈まことのことばはうしなはれ 雲はちぎれてそらをとぶ……〉(《春と修羅》)とうたうとき,そこでは原初の力ある〈ことば〉の回復が志向されているといえよう。
言語
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デジタル大辞泉プラス 「言葉」の解説

言葉

藤原定による詩集。1989年刊行(沖積舎)。1990年、第8回日本現代詩人賞を受賞。

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世界大百科事典(旧版)内の言葉の言及

【言語】より

…人間同士の意思伝達の手段で,その実質は音を用いた記号体系である。〈ことば〉ということもあるが,〈ことば〉が単語や発話を意味する場合がある(例,〈このことば〉〈彼のことば〉)ので,上記のものをさす場合は,〈言語〉を用いた方が正確である。また,人間以外のある種の動物の〈言語〉をうんぬんすることも可能ではあるが,その表現能力と,内部構造の複雑さおよびそれとうらはらの高度な体系性などの点で,人間の言語は動物のそれに対して質的なちがいを有している。…

【声】より

…声の強さは,声帯が閉じる強さや,下方からの気流の圧力によって決まる。そのほか声が口から出てくるときにはことばの音としての音色をもつが,〈アー〉とか〈エー〉とかいうような母音の音色は喉頭より上側の共鳴腔の形で決まる。ことばには母音のほかに子音という成分があるが,これは喉頭のみでなく,舌,あご,くちびるなどの共鳴腔をつくっている器官がすばやい,しかも複雑な運動をすることによって生ずる。…

【単語】より

…ことばの最も基本的な単位として,我々が日常的・直観的に思い浮かべるのが単語である。そして我々はこの単語を一定のルールに従って結合させ,より大きな単位であるを構成し,それを表出することによって,他人との間にコミュニケーションを成立させているのである。…

【品詞】より

文法【湯川 恭敏】
【日本語の品詞研究の歴史】
 日本人が日本語の単語について,〈てにをは〉の一類を立てたのは恐らく鎌倉時代以前からのことで,漢文訓読法から注意されたと思われる。それ以外を〈名〉(物の名)と〈ことば〉(語,詞)とに分けたのは鎌倉時代末にみえる。この3分類は,十分に文法機能のうえから考察した結果ではなかろうが,17世紀初めのJ.ロドリゲスの《日本小文典》は,日本人が全品詞を〈名,ことば,てには〉の3語に包括していると述べている。…

【分類】より

…〈分類〉とは文字どおり,対象を類に従って(似たものをまとめて)分けることであるが,〈類別〉とは違って,全体を共通性に従って大きく分け,分けたものをさらにまた共通性に従って細分し,これ以上分けることのできない個体の一つ手前(種という)まで順次分けていって段階づけ,体系化することをいう。 分類するという営為はおそらく人類の歴史とともに古く,植物や動物にすでに見られるように,自分と同類のもの(とくに異性)とそれ以外のものに分けることが始まりであったと見られる。…

【幼児語】より

…言葉を話題にして言葉で表現することもできるようになる。そのせいか副詞を用いた限定修飾や,漢語,外来語を用い,成人の使うことばを使いたがる。しかし,たとえば〈時〉についての概念には乏しく,将来のことも〈キノウ〉ですますといった現象も見られる。…

※「言葉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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