記載(読み)キサイ

デジタル大辞泉 「記載」の意味・読み・例文・類語

き‐さい【記載】

[名](スル)書類書物などに書いて記すこと。「詳細は説明書に記載されている」「記載事項」
ある生物分類群定義する際、その主要な形質をすべて記述したもの。模式標本もとに新種として報告する場合には原記載、これを記した論文を記載論文という。
[類語]書き入れる書き込む記入記帳簿記記録書く記すしたためる書き表す書き立てる記する書き記す書き綴る筆記速記

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精選版 日本国語大辞典 「記載」の意味・読み・例文・類語

き‐さい【記載】

〘名〙
① 書類、書物などに書きしるすこと。また、その内容。
万葉(8C後)一七・三九一五・左注「右年月所処未詳審、但随聞之時、記載於茲
破戒(1906)〈島崎藤村〉一「この当時の光景は『懺悔録』の中に精しく記載してあった」
② 生物分類学で、学名を発表するさい、新種の形質・特徴を記述すること。また、その文。原記載。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「記載」の意味・わかりやすい解説

記載
きさい

単語の意味は「書き込まれるものが存在していて、実際にそこへ何かを書き込む行動」であるが、自然科学では、英語のdescriptionの訳語として定着し、「ある実在物について、その性質や状態を、ほかの意味にとられないよう、文字情報化すること」を意味する。

 ただし、科学者間の暗黙の了解事項として、(1)事実について書き、想像や推定の要素をいっさい含まないこと、(2)いったん記載された内容は、真実として受け入れられ、誤りが証明されない限り書き換えられない、という条件があり、記載内容の厳密性を保証するための合意として受け入れられている。多少の例外はあり、たとえば、部分的な化石から古生物の全体像が復元され、その作業いっさいが合法的かつ信頼できる学説などによって保証されている場合は、事実に基づくものではないが、その内容は記載として認められ、事実について書かれたものと同等の扱いを受ける。

 原則的には、記載は論文など、公表される前に第三者による内容の検討などの手続きを経たものが、その適用を受けられることになり、著書学会などでの口頭発表は、記載に含められないとする見解のほうが多い。

 日常生活に関連して、「記載」という語がよく用いられるのは、公文書調書、裁判記録、臨床記録などであるが、この語の定義が法律的に正確に定められているものではないようである。

 多くの国家、会社、社会活動団体などでは、関係者や社会の日々の動向を記録する専門職が置かれていることがあり、chronicler(諸事記録人)とよばれている。これは貴族社会の習慣に端を発したものといわれているが、外国の新聞記事などで、主語がchroniclerとなる文章では、動詞としてはdescribe(記載)がよく用いられる。

[加藤 昭 2015年9月15日]

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改訂新版 世界大百科事典 「記載」の意味・わかりやすい解説

記載 (きさい)
description

生物の分類群を定義するために,主要な形質のすべてについて記述したもの。分類群の特徴を際だたせるためにその群に固有の形質だけを記述したものを記相diagnosisといって記載から区別することがある。分類群を初めて報告する時(新種,新属など)に与える記載を特に原記載という。国際命名規約では,動物名の原記載はラテン語以外の文明国の国語でもよいことになっているが,植物名の原記載はラテン語の記載が伴っていなければ有効ではない。

 原記載以外にも,分類群の再検討がまとめられる場合などに,種や属などの記載が与えられるが,その際原記載に追補が加えられたり,訂正が行われたりすることが多い。また,記載や記相は文章によるものだけでなく,図や写真などで分類群の属性を示したものも含めていう。文章だけで表現したものを特に記載文あるいは記相文ということがある。かつては形態的形質が記載の大部分を占めていたが,分類群のもっている形質のすべてを表現するのが記載の本質であることから,明らかにされる事実が増えれば増えるほど,記載に含まれる形質は多くなっている。
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普及版 字通 「記載」の読み・字形・画数・意味

【記載】きさい

記録する。

字通「記」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の記載の言及

【形質】より

… 種や属などの分類群を識別するために,その分類群を代表する形質がとり上げられるが,分類群に固有でそれだけでその分類群を限定できるような形質を指標形質という。形質のすべてを記述したものが記載で,指標形質を記述したものが記相である。指標形質のうち,分類群の識別に有効なものだけを選んで検索表keyをつくる。…

※「記載」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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