訪問着(読み)ほうもんぎ

精選版 日本国語大辞典 「訪問着」の意味・読み・例文・類語

ほうもん‐ぎ ハウモン‥【訪問着】

〘名〙 婦人和装の一種。略式の礼服。他家訪問するときなどに着る衣服。紋をつける場合もある。訪問服。
※南方郵信(1938)〈中村地平〉二「肥った体を裾模様のある訪問着につつんで」

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デジタル大辞泉 「訪問着」の意味・読み・例文・類語

ほうもん‐ぎ〔ハウモン‐〕【訪問着】

女性の略式礼装用の和服絵羽模様長着で、社交・訪問などに用いる。

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改訂新版 世界大百科事典 「訪問着」の意味・わかりやすい解説

訪問着 (ほうもんぎ)

既婚,未婚を問わず女性の準礼装用として用いられる着物をいう。明治期のいわゆる文明開化後,上流階級の女性の社交外出着として商品化された。おもに肩裾を中心とした絵羽模様で三つ紋付。華麗な色柄が好まれ,大正時代には新しい生地や洋風の柄もとり入れられ,第2次世界大戦後に一般化した。付下げは戦時中,訪問着などが禁止されたため商品化されたものであるが,当初の上前の衽(おくみ)を中心とした前後上向きの飛び柄はしだいに訪問着化し,近年はこの付下げ訪問着が訪問着にとって変わりつつある。工程の単純化による価格安や家紋に対する意識の変化などによるものといえよう。いずれも生地はちりめん系統から紬(つむぎ)にいたるまで数多く,染,繡,織と多彩である。準礼装としては友禅染などで格調高い柄を選び,帯,小物,下着を留袖に準ずるよう装う。絞り,更紗,﨟纈(ろうけつ),紬地などは高価でも改まった場にはむかない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「訪問着」の意味・わかりやすい解説

訪問着
ほうもんぎ

女物長着の一種で、準礼装として用いる。正式に他家を訪問するとき、また宴会、観劇などのおりに着る絵羽(えば)模様の晴れ着。明治時代の礼装は紋付、裾(すそ)模様の無垢(むく)仕立てに、対(つい)下着を重ねた。大正期になり女性の社交の場が広がると、需要に応じて格式ばらずに華やかさのある社交服が売り出され、昭和に入ると、これが訪問着という名で一般に普及した。生地(きじ)は縮緬(ちりめん)、綸子(りんず)、夏には絽(ろ)などが用いられ、下着は重ねず、変り裾(表と同色の裾回しが多い)をつける。柄づけには総模様、裾模様、胸肩と裾に模様を入れたものがある。また、振り違いといって、右後ろ袖(そで)と左前袖に模様を置いたものもある。染物のほか、お召、紬(つむぎ)などに、絵羽風の模様を織り出した略装もみられる。昭和の初めまでは、三つ紋、一つ紋の染め抜きか、縫い紋をつけたが、現在はほとんど無紋で、袖丈(そでたけ)も振袖より短く、軽快である。付け下げは訪問着をさらに簡略化したものである。

[岡野和子]

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百科事典マイペディア 「訪問着」の意味・わかりやすい解説

訪問着【ほうもんぎ】

女性の準礼装とされる着物。絵羽模様や付下げが多く,紋をつけることもある。縮緬(ちりめん),紋綸子(りんず)などで作られ,袋帯や,錦や緞子(どんす)の名古屋帯をあわせる。
→関連項目礼服

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「訪問着」の意味・わかりやすい解説

訪問着
ほうもんぎ

大正末期から今日までの女性の準礼装用長着。一般に縮緬 (ちりめん) ,綸子 (りんず) 地に絵羽模様を入れるが,留袖とは異なり,年齢,着る場所などによる文様や色などの制約がない。袋帯,組紐の帯締め,絹物の帯揚げ,白の半襟,白足袋,草履を組合せる。

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日本文化いろは事典 「訪問着」の解説

訪問着

[女性用] 訪問着は色留袖の次に格式高い着物です。様々な模様があり、洋服のビジティングドレスのような位置づけにあたります。未婚・既婚を問わず冠婚祭・社交着として着用できます。

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