誰・孰(読み)たれ

精選版 日本国語大辞典 「誰・孰」の意味・読み・例文・類語

たれ【誰・孰】

〘代名〙 (近世後期以降「だれ」とも) 不定称。その人とはっきりわからない人や、名を知らない人などに対して用いる。また、はっきりと人の名を表わさず、特定の人を間接的に述べる。た。
古事記(712)中・歌謡「大和の 高佐士野を 七行く 嬢子ども 多礼(タレ)をし枕(ま)かむ」
書紀(720)仁徳一六年七月・歌謡「水底ふ 臣の嬢子を 多例(タレ)養はむ」
源氏(1001‐14頃)東屋「たれぞ。名のりこそゆかしけれ」
太平記(14C後)一一「道路に袖をひろげ食を乞し女房の倒て死しは誰(タレ)か母也」
[語誌](1)「た(誰)」と意味内容は同じであるが、より広い用法をもっていて、和文脈、漢文脈にも、また、さまざまな助詞を伴っても用いられる。
(2)「たれか…せむ」などの形で疑問や反語的表現を伴って、その事柄の実現性などを強く否定する用法も多くみられる。
(3)「だれ」と変化したのは、近世後期からの現象と思われる。現代では、「だれ」が一般的であるが、主に文語脈の中では、「たれ」ともいう。

だれ【誰・孰】

〘代名〙 ⇒たれ(誰)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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