豊か・饒か・裕か(読み)ゆたか

精選版 日本国語大辞典 「豊か・饒か・裕か」の意味・読み・例文・類語

ゆた‐か【豊か・饒か・裕か】

〘形動〙 (「か」は接尾語)
① 満ち足りていて不足のないさま。富んでいてゆとりのあるさま。豊富。富裕。
書紀(720)仁徳四年三月(前田本訓)「風雨時に順ひて、五の穀(たなつもの)豊穰(ユタカ)なり。三稔(みとせ)の間、百姓富み寛(ユたか)なり」
※竹取(9C末‐10C初)「かくておきな、やうやうゆたかに成り行」
② 広々としていてゆとりのあるさま。
(イ) 人の心や態度などに余裕があって、おおようであるさま。心が広く安らかであるさま。
※書紀(720)継体即位前(前田本訓)「天皇、壮大(をとこさかり)にして、士(ひと)を愛(め)で賢(さかしき)を礼(ゐやま)ひたまふて、意(みこころ)豁如(ユタカニましま)す」
(ロ) ゆったりと広がるさま。ゆるやかなさま。
古今(905‐914)雑上・八六五「うれしきをなににつつまん唐衣たもとゆたかにたてといはましを〈よみ人しらず〉」
(ハ) ゆっくりと落ち着いているさま。のんびりとくつろいでいるさま。
御伽草子・一尼公(つれなしの尼君)(室町時代物語大成所収)(室町末)「うつつになりてかほをなで、のびをゆたかにかきて」
③ ふっくらとしたさま。豊満で美しいさま。
東京の三十年(1917)〈田山花袋〉再び東京へ「そこには肥った豊かな頬をした娘がゐた」
④ 他の語に付いて、基準限度を越えて、十分にあるさま、余りのあるさまを表わす。
説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)一三「いじゃう、なな七日と申には、六しゃく二ふんゆたかなる、もとのをくりどのとおなりある」
ゆたか‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android