費・弊・潰(読み)ついえる

精選版 日本国語大辞典 「費・弊・潰」の意味・読み・例文・類語

つい・える つひえる【費・弊・潰】

〘自ア下一(ヤ下一)〙 つひ・ゆ 〘自ヤ下二〙
① くずれこわれる。敗れる。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「猛き力盛りなる謀は、日々に費(ツヒえ)衰へぬ」
史記抄(1477)三「周を攻るとて兵はついへて」
② 疲れる。疲弊する。
書紀(720)神武即位前戊午一一月(北野本訓)「而うして介冑(いくさ)の士(ひととも)、疲弊(ツヒユル)こと無(な)きにあらず」
③ やせる。衰える。よわる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)八「忽然に皆枯(か)れ悴(ツヒエ)て」
源氏(1001‐14頃)蓬生年頃、いたう、つゐえたれど、猶、物清げに」
④ 乏しくなる。へる。つかってなくなる。
※書紀(720)皇極三年七月(図書寮本訓)「都(かつ)て益(まさ)る所無くして損(おと)り費(ツヒユル)こと極めて甚し」
⑤ いたずらに経過する。時間が過ぎる。
※交易問答(1869)〈加藤弘之〉上「それに時間が費(ツイエ)て」

ついえ つひえ【費・弊・潰】

〘名〙 (動詞「ついえる(費)」の連用形の名詞化)
① くずれ敗れること。悪くなること。滅びてしまうこと。
※書紀(720)欽明二一年九月(北野本訓)「王の政の弊(ツヒヘ)未だ必ず此に由らずはあらず」
② 疲れ苦しむこと。精神的・肉体的に弱ること。おとろえ。疲労
太平記(14C後)一「民の弊(ツイヘ)を思はず、只日夜逸遊を事として」
③ 無駄なこと。損失損害弊害
方丈記(1212)「七珍万宝さながら灰燼となりにき。その費え、いくそばくぞ」
④ (形動) 費用がかかること。金がかかること。また、そのさま。かかり。物いり。出費
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「くちをしう、もののついえあることをかぞふれば、多くの損なり」
浮世草子世間胸算用(1692)四「氏子(ツイヘ)かんがへ神も胸算用にて」

ついや・す つひやす【費・弊・潰】

〘他サ五(四)〙
① 疲れよわらせる。おとろえさせる。疲弊させる。そこなう。
※観智院本名義抄(1241)「潰 ツヒヤス」
正法眼蔵(1231‐53)弁道話「いたづらに思量念度をつひやして」
※徒然草(1331頃)九七「その物につきて、その物を費しそこなふ物、数を知らずあり」
② 財物などをつかってなくす。つかいへらす。へらす。また、浪費する。
※書紀(720)清寧即位前(図書寮本訓)「権勢(いきほひ)の自由(ほしきまま)にして、官物(おほやけ)を費用(ツヒヤス)
※方丈記(1212)「宝をつひやし」
③ 時間や労力などをかける。
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三「夏季三ケ月御費(ツヒヤ)しに相成り候」
※鳥獣虫魚(1959)〈吉行淳之介〉「これ以上の言葉を費す必要を私はみとめない」

つい・ゆ つひゆ【費・弊・潰】

〘自ヤ下二〙 ⇒ついえる(費)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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