贖・購(読み)あがう

精選版 日本国語大辞典 「贖・購」の意味・読み・例文・類語

あが・う あがふ【贖・購】

〘他ハ四〙 (古くは「あかう」)
① (贖) 物を代償として出して、罪などのつぐないをする。また、物を神に捧げて、罪を払い、命の長久を求める。あがなう。
書紀(720)雄略即位前(前田本訓)「韓(から)媛と葛城(かつらき)の宅七区(ななところ)とを奉献りて、罪(しぬつみ)を贖(アカハ)むことを請(う)けたまはらむ」
万葉(8C後)一七・四〇三一「中臣の太祝詞(ふとのりとごと)言ひ祓(はら)へ安賀布(アカフ)命も誰(た)がために汝(なれ)
② (購) 代償を払って、そのものを自分の自由にする。買う。あがなう。
※霊異記(810‐824)上「亀の命を贖(アカヒテ)放生し〈興福寺本訓釈 贖 阿可比天〉」
[語誌](1)室町後期頃に「あがなふ」が用いられるようになり、近世になると「あがふ」を使う例は稀になる。
(2)「あがふ」「あかふ」の清濁について、挙例の「万葉‐四〇三一」は大伴家持の作であるが、家持は「賀」字を清音に使用する傾向があった。「観智院本名義抄」では「贖」字の訓「アカフ」に付された声点が一つなので、平安末頃まで第二音節は清音と考えられる。「倭玉篇諸本また「字鏡抄」「字鏡集」や抄物でも第二音節に濁点の施された例を見ず、中世も清音であった可能性が高い。

あがな・う あがなふ【贖・購】

〘他ワ五(ハ四)〙 (古くは「あかなう」。動詞「あがう」の語幹接尾語「なう」のついた語)
① (贖) 罪のつぐないをする。罪滅ぼしのために金、物品などを出す。埋め合わせをする。あがう。
和玉篇(15C後)「贖 アカナフ」
② (購) 何かを代償として別のあるものを手に入れる。また、買い求める意の、改まった言い方。あがう。
東西南北(1896)〈与謝野鉄幹〉「世の中の黄金のかぎり身につけて、まだ見ぬ山を皆あがなはむ」
[語誌]「あかう」から派生した語で、「うらう」⇔「うらなう」、「あざう」⇔「あざなう」などの動詞がこの派生に影響を与えたと推測される。→「あがう」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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