赤色巨星(読み)セキショクキョセイ(英語表記)red giant

翻訳|red giant

デジタル大辞泉 「赤色巨星」の意味・読み・例文・類語

せきしょく‐きょせい【赤色巨星】

表面温度が低い巨星うちスペクトル型がK型・M型の恒星水素核融合で使い果たされ、ヘリウム炭素珪素などの重い元素がたまった中心部が収縮を起こすと、外層部は膨張を始め、巨大な赤い星となる。やがて外層部はガスとして放出され、惑星状星雲を残して中心部は白色矮星となる。→赤色超巨星

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精選版 日本国語大辞典 「赤色巨星」の意味・読み・例文・類語

せきしょく‐きょせい【赤色巨星】

〘名〙 スペクトル型がK・M・S・C型の巨星。巨星のうち、低温で赤色の晩期型スペクトルを示すもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤色巨星」の意味・わかりやすい解説

赤色巨星
せきしょくきょせい
red giant

巨星のうちで、表面が5000K(ケルビン)から3000K程度の低温度で、赤色に見える星(恒星)。化学組成差異があり、スペクトル型も分かれている。酸素が多いK型とM型では一酸化チタン分子TiOの吸収がみられ、炭素の多いC型では炭素分子やシアン分子の吸収が現れる。重金属の多いS型も存在する。絶対等級は、同じスペクトル型の矮星(わいせい)(主系列星)より数等級から十数等級も明るい。直径は太陽の10倍から数百倍に達するものもあり、HR図の右側上部に位置している。

 大多数の主系列星は、進化すると赤色巨星になる。水素の燃えかすであるヘリウムが中心付近にたまり、それを包む球殻上で水素が燃えるようになり、外層が大きく膨張し、HR図上を右側上方に向かって進化していく。そして、その最外層からは物質が徐々に外へ流れ出し大きく広がり、惑星状星雲を形成する。なお、太陽の8倍以上の質量の恒星は、赤色巨星(さらに進化した超巨星)段階の最後に超新星爆発を起こすと考えられる。赤色巨星には、うしかい座アークトゥルス、おうし座のアルデバランなど、見かけ上も明るいものが多い。

[前原英夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「赤色巨星」の意味・わかりやすい解説

赤色巨星
せきしょくきょせい
red giant

5000℃以下の表面温度をもつ星のうち,特に明るい星をいう。スペクトル型はKまたはM,絶対光度は0等以上の星である。星の直径は太陽の 100倍以上あり,赤く明るく輝くのでこう呼ばれる。ベテルギウスアンタレスアルクトゥールスなどの星は赤色巨星である。恒星進化の立場からみれば,赤色巨星は中年期に相当する。星が生れて間もない頃は,星の中心部で水素燃焼核反応が起っている。水素が燃え尽きヘリウムができると,ヘリウムからできた星の中心核は自重を支えきれず重力収縮する。そこで中心核の温度が上昇し,星の外層を押し広げるので,ふくらんだ表面温度の低い赤色巨星ができる。赤色巨星では,ヘリウム中心核の外側で水素の核反応が起っている。このような星は不安定で,長周期変光星となったり,星間空間にガスを放出したりする。この段階で十分質量を放出すると白色矮星になるが,ある限界以上の質量を保存していれば,ヘリウムが核反応を起し,さらに進化を続ける。赤色巨星が近接連星系の一員であれば,赤色巨星の外層の質量は伴星に流れ込む。このとき多量のX線が放出されたりする。

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改訂新版 世界大百科事典 「赤色巨星」の意味・わかりやすい解説

赤色巨星 (せきしょくきょせい)
red giant star

低温の巨星をいい,スペクトル型ではG,K,M型および炭素星などを含む。これらの星の膨大な外層部は大部分対流層となっていて,星の中心部で起こった核反応の生成物を星の表面にまでかくはんする。事実,赤色巨星には化学組成に異常を示すものが多く,炭素星,S型星などはそのもっとも著しい例である。G,K,M型星や球状星団の赤色巨星についても詳細なスペクトル解析が行われた結果,とくに炭素,窒素などは複雑な異常を示しCNO3重サイクルの反応生成物が表面にまで混合していることを示しているが,今日の恒星進化理論ではなお,よく理解できない点も多い。赤色巨星は,また定常的な質量放出を行い,これら核反応生成物を星間空間に還元しつつある。赤色巨星の有効温度や光度などの物理的特性は,その質量,年齢,化学組成などによって特徴的な値を示すが,赤色巨星は比較的年齢の古い星団,銀河などの主要な構成要素であり,かつ比較的容易に観測されるので,種々の恒星系の進化段階を示す指標としても重要である。
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知恵蔵 「赤色巨星」の解説

赤色巨星

低温度の巨大な恒星で、HR図上では、温度が低く光度が高い右上の位置を占める。主系列星が中心部の水素を核融合反応に使い果たした後に、外層が膨張して表面の温度が下がり、赤色の巨大な星となる。太陽程度の質量の星はやがてガスを放出して惑星状星雲を作り、白色矮星になる。質量の大きな星は進化して赤色超巨星と呼ばれる、さらに明るく大きな巨星となり、最後は超新星爆発を起こす。さそり座α星のアンタレスやオリオン座α星のベテルギウスは赤色超巨星の代表例。

(土佐誠 東北大学教授 / 2007年)

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百科事典マイペディア 「赤色巨星」の意味・わかりやすい解説

赤色巨星【せきしょくきょせい】

低温の巨星。比較的古い星団や銀河の主要な構成要素で,スペクトル型でいうと,G,K,M型や炭素星(スペクトル中の炭素化合物による吸収帯がきわめて強く生じる星)などが含まれる。観測が比較的容易に行えることから,恒星系の進化段階を示す指標として重要。

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世界大百科事典(旧版)内の赤色巨星の言及

【恒星】より

…主系列星は太陽と同じく中心部で水素をヘリウムに転換する熱核反応によってエネルギーを供給している恒星である。原子核エネルギーの燃料ともいうべき水素が十分にある間は主系列星として半径や明るさを変えないが,中心部で水素が消費され,その燃えかすであるヘリウムなどが増えると半径が大きくなり赤色巨星,超巨星へと進化する。最終的には,高密度の残骸ともいうべき白色矮星(わいせい),中性子星,ブラックホールのいずれかを残すか,または何も残さず全質量を星間ガスに還元するかであると考えられている。…

※「赤色巨星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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