精選版 日本国語大辞典 「走・奔・趨」の意味・読み・例文・類語
はし・る【走・奔・趨】
〘自ラ五(四)〙
① 人や動物がすばやく移動する。
※枕(10C終)九九「供に侍三四人ばかり、ものもはかではしるめり」
② 乗物が動いてはやく進む。
※枕(10C終)三「八日、人のよろこびしてはしらする車の音」
③ 水などが勢いよく流れる。
※名語記(1275)三「あけ水などのはしるをはすといへり。如何」
④ 激しく動く。特に「胸がはしる」の形で、胸がおどる、動悸(どうき)するの意で用いる。
※蜻蛉(974頃)中「胸つぶつぶとはしるに」
⑤ 犯した罪や難を避けるために逃げる。逃亡する。出奔する。駆け落ちする。
⑥ ある方向に強く傾く。特定の方向にひたすら進む。「悪事に走る」
※読本・雨月物語(1776)菊花の約「只栄利にのみ走(ハシ)りて士家の風なきは」
⑦ すらすらと事が運ぶ。
(イ) らくらくと動く。すべるように動く。手や筆、または刃物などについていう。
※日葡辞書(1603‐04)「カタナガ faxiru(ハシル)」
※虎明本狂言・角水(室町末‐近世初)「筆ははしりて文字はとまれり」
(ロ) 十分すぎるくらいにはたらく。特に、知恵策謀などについていう。
※日葡辞書(1603‐04)「チエノ faxitta(ハシッタ) モノヂャ」
⑧ 多くのものが散り広がる。飛び散る。ほとばしる。ころがる。
※南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)二「時に俗士雲のごとくに奔(ハシリ)、法徒霧のごとくに集まりて」
※宇治拾遺(1221頃)二「足をみければ、血はしりてとどまるべくもなし」
⑨ 細長いものが広がる。長く延びる。
(イ) すすっとひびがはいる。割れる。はぜる。
※京大本湯山聯句鈔(1504)「茶碗なんどにものぎめのはしるがあるぞ」
(ロ) 道や線などが続く。
⑩ 光などが速く移動する。「稲妻が走る」
⑪ 表情などに、ちらっと瞬間的に現われる。「顔に苦痛の色が走る」
⑬ 相場用語で、先取りして株などを売り買いする。〔現代語大辞典(1932)〕
⑭ 音楽で、テンポが始まったときより速くなる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報