起・興・熾・発(読み)おこす

精選版 日本国語大辞典 「起・興・熾・発」の意味・読み・例文・類語

おこ・す【起・興・熾・発】

〘他サ五(四)〙
[一] 力を加えたり、うながしたりして立った状態にさせる。
① 横になっているものを垂直に立てる。傾いたものをもとに直す。→振り起こす①。
源氏(1001‐14頃)手習「夢のやうなる人をみたてまつる哉とあま君はよろこびてせめておこしすゑつつ御髪手づからけづり給ふ」
寝床から離れさせる。また、眠りからさめるようにする。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「女御の君、めのとを召して、『日暮れにけり。おこしたてまつりてものまゐれ』とのたまへば」
舟戦の語。舟のほばしらを立てる。また、いかりを上げる。
[二] ひらたいものや、固着しているものに、めくり上げるような力を加える。
① 土を掘り返す。開墾する。また、掘って表に出す。→掘り起こす
※大唐西域記巻十二平安中期点(950頃)「其の宝物を発(オコシ)掘り取らむなり」
② 固く付いているものを、はがすように動かす。
※浄瑠璃・平家女護島(1719)二「指であはびおこせば爪は蠣貝(かきがひ)ばいのふた」
③ 花札などを、めくって表を出す。
[三] 今までなかったところに、ある物事や状態を生じさせる。
① 人に働きかけて、新しく物事をつくりだす。自分で新しく物事を始める。
古事記(712)上「久美度(くみど)に興(おこ)して生める子は、水蛭子(ひるこ)
※続後撰(1251)釈教・六三四・詞書「前大僧正慈鎮、天台座主になりて勧学講といふ事をおこしをこなひ侍りけるを聞きて」
② 大勢の人を集め動かす。出動させる。
※古事記(712)中「登美能那賀須泥毘古(とみのながすねびこ)、軍(いくさ)を興(おこ)して待ち向ひて戦ひき」
③ 穏やかな状態のところに、それを騒がせるような物事や状態を生じさせる。「事件をおこす」
※地蔵十輪経元慶七年点(883)四「怨みを結びて諸の闘諍を興(オコサ)む」
④ 感情、欲望などを心に生じさせる。
※古事記(712)上「荒き心を起(おこ)して迫め来ぬ」
坑夫(1908)〈夏目漱石〉「坑夫にならうと云ふ気も起(オコ)して見たんだが」
⑤ 版に彫ったり、文章を書き始めたりする。
咄本醒睡笑(1628)八「かのえびすの版木を摺る者、いろいろ人の尊むほどの姿をおこして持ちたりしが」
[四] 勢いをさかんにする。
① (興) ふるわない物事をさかんにする。
古今(905‐914)仮名序「いにしへの事をも忘れじ、ふりにし事をもおこし給ふとて」
気持をひきたてる。奮起させる。→振り起こす②。
※竹取(9C末‐10C初)「からうじて思ひおこして、弓矢をとり立てんとすれども」
③ (熾) 火気をさかんにする。また、炭に火をうつす。
※枕(10C終)一「いと寒きに、火などいそぎおこして」
④ 寄席芸人の用語。沈んでいる客席気分を陽気にする。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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