精選版 日本国語大辞典 「込・籠」の意味・読み・例文・類語
こ・める【込・籠】
[1] 〘他マ下一〙 こ・む 〘他マ下二〙
① 物の中へ入れる。
(イ) ある場所に入れて出さないようにする。とじこめる。
※伊勢物語(10C前)六五「この女のいとこの御息所(みやすどころ)、女をばまかでさせて、蔵にこめてしをり給うければ」
※源氏(1001‐14頃)若紫「雀の子をいぬきがにがしつる。ふせごのうちにこめたりつるものを」
(ロ) 外から囲むようにおおい入れる。
(ハ) 入れ物などにつめる。また、おさめ入れる。
※能因本枕(10C終)四三「濃き綾のいとつややかなる、いたくは萎えぬを、頭こめて、引き着てぞ寝ためる」
※和英語林集成(初版)(1867)「テッポウニ タマヲ komeru(コメル)」
(ニ) 特定の場所にずっと居させる。
※平家(13C前)一一「霊仏霊社にたっとき僧をこめ、種々の神宝をささげて祈り申されけれども」
※和英語林集成(初版)(1867)「シロニ ツワモノヲ komeru(コメル)」
② 心の思いなどを表にあらわさないようにする。包み隠す。
※万葉(8C後)一四・三五七五「美夜自呂(みやじろ)の砂丘辺(すかへ)に立てる貌(かほ)が花な咲きいでそね許米(コメ)てしのはむ」
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「ちぢに思ひくだくれど、のたまふべき人しなければ、心にこめてありへ給ふ」
③ 表情、言語、行動などの中に含ませる。持たせる。
※花鏡(1424)一調二機三声「調子をば機にこめて、声を出すがゆゑに」
※或る女(1919)〈有島武郎〉前「悪意が罩(コ)められ過ぎてゐることを直覚した」
④ ひとつのものにまとめる。一括する。
※わらんべ草(1660)一「数おほかりしを、中比、式三番にこめしとぞ」
⑤ 気持などを集中する。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「イルイノ テマヲ cometa(コメタ) コトドモヲ ミテワ」
※幼学読本(1887)〈西邨貞〉三「一心を込めて為せば、成らざる者無し」
⑥ 力でおさえつけて従わせる。いじめる。やりこめる。
※滑稽本・人間万事虚誕計‐後(1833)「あんな野郎にこめられては男がたたねえ」
[2] 〘自マ下一〙 こ・む 〘自マ下二〙 煙、霧、霞などがあたりにいっぱいになる。立ちこめる。
※十六夜日記(1279‐82頃)「かすみこめたるながめのたどたどしさ」
こ・む【込・籠】
[1] 〘自マ五(四)〙
※紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一一日「人げ多くこみては、いとど御心地も苦しうおはしますらむ」
② 複雑に入り組む。精巧に作られる。
(イ) (自動詞に付けて) あるものの中に入る。「上がりこむ」「溶けこむ」「逃げこむ」など。
(ロ) 十分にする。過度にする。また、長く続ける。「走りこむ」「老けこむ」「煮こむ」「寝こむ」など。
(ハ) 心がとざされ、他をうけつけない状態でする。「考えこむ」「ふさぎこむ」など。
[2] 〘他マ五(四)〙
① あるものの中に入れる。動詞の連用形に付けて用いられる場合も多い。「つめこむ」「流しこむ」「おしこむ」など。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「白銀の雉子二、腹にりうなうこみて、雉子のかはをはぎて」
※四河入海(17C前)二「箝はものを云はせじとて口にこみてをく物ぞ」
② 多くの矢を一か所に射込む。また、刀をぶすりとさし込む。
※太平記(14C後)三四「武具の迦(はず)れ、内甲を散々にこみければ、つづく御方はなし」
③ 酒を無理じいして飲ませる。
※四河入海(17C前)一五「大盃の太白を以て罰盃をこみ申すべきぞ」
④ 費用や日数を費やす。
※浄瑠璃・三荘太夫五人嬢(1727)一「多人数の道中に日をこみ、京着延引に罷成れば」
⑤ (のみこむ意) 承知する。心得る。
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)四「ヱヱ、込(コン)だ込だ。妾奉公(てかけぼうこう)にやらしゃるの」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「ヲット、皆までいはんすな。込(コン)でゐる」
[3] 〘他マ下二〙 ⇒こめる(込)(一)
[4] 〘自マ下二〙 ⇒こめる(込)(二)
[補注]四段活用の「こむ」は、(一)③や(二)①などのように他の動詞に下接して用いられることが多いが、「こみ合う」「こみ上げる」「こみ入る」「こみ乗る」など、他の動詞に上接して用いられることもある。
ごめ【込・籠】
〘接尾〙 (下二段動詞「こむ(込)」の連用形が接尾語化したもの) 名詞に付いて、それを含めていっしょに、の意をあらわす。…ごと。…ぐるみ。
※万葉(8C後)一七・三九九八「我がやどの花橘を花其米(ゴメ)に玉にそ吾(あ)が貫(ぬ)く待たばくるしみ」
ごみ【込・籠】
〘接尾〙 名詞に付いて、それもいっしょに、の意をあらわす。…ごと。
※雑俳・大福寿覚帳(1711‐16頃)「かけて見れや・まへだれごみに十五くはん」
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