デジタル大辞泉
「近」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ちか・い【近】
〘形口〙 ちか・し 〘形ク〙
[一] 空間・時間のへだたりが少ないさま。
① 空間・距離のへだたりが少ない。
※万葉(8C後)一七・三九八三「あしひきの山も知可吉(チカキ)をほととぎす月立つまでになにか来鳴かぬ」
※土左(935頃)承平五年一月一八日「このとまり、とほくみれども、ちかくみれども、いとおもしろし」
② 特に身近なところにいる。また、手近である。
※
古事記(712)下「墨の江の中つ王に近
(ちか)く習
(つか)ふる隼人」
※浮世草子・
世間胸算用(1692)一「放下しがしたる事なれ共、皆人賢過て結句近き事にはまりぬ」
③ 時間のへだたりが少ない。
(イ) 現時点より過去に向かって大きくさかのぼらないさまをいう。
※源氏(1001‐14頃)
真木柱「ちかき年頃となりては、御中もへだたりがちにて」
※杏の落ちる音(1913)〈
高浜虚子〉一一「お紫津が〈略〉公然手を切ったのは近い事であった」
(ロ) 現時点より未来に向かって遠くへだたることがないさまをいう。
※万葉(8C後)一九・四二四七「天雲の遠隔(そきへ)の極み吾が思へる君に別れむ日近くなりぬ」
※彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉四「近い
うちにヨーロッパに出かけることになっていた」
※志都の岩屋講本(1811)下「小便近く」
④
物事が進行して、ある数値に届こうとしている。ほぼ及ぼうとしている。
※枕(10C終)二四四「七十ちかき親二人を持たるに」
※満韓ところどころ(1909)〈
夏目漱石〉一四「此同勢は
前後を通じると約十人近
(ヂカ)くあったが」
⑤ (多く、「目が近い」の形で) 近視である。ちかめである。
※搦手から(1915)〈
長谷川如是閑〉くつしたの穴「少し近眼
(チカ)い癖に
眼鏡を用ひない僕には」
⑥ (「耳が近い」の形で) よく聞こえる。耳ざとい。〔和英語林集成(再版)(1872)〕
[二] 関係が密接であるさま。
① 精神的なつながりが密接である。親密である。したしい。
※万葉(8C後)一五・三七六四「
山川を中に隔
(へな)りて遠くとも心を知可久
(チカク)思ほせ我妹」
※源氏(1001‐14頃)
柏木「ちかき御中らひにて、聞き及ばせ給ふやう」
※源氏(1001‐14頃)
宿木「かずまへ給はざりけれどちかき人にこそはあなれ」
③ 物事の
性状・
内容が似ている。ほとんど同じである。近似している。
※
書紀(720)顕宗即位前(図書寮本訓)「功
(いさを)造物(おのつからなる)に隣
(チカ)うして清き猷
(みち)、世に」
ちか‐げ
〘形動〙
ちか‐さ
〘名〙
ちかく【近】
※虎明本狂言・
武悪(室町末‐近世初)「ちかくへおよりやらぬやうにしてくれさしめ」
② 近い時間。このごろ。ちかごろ。最近。
※
曾我物語(南北朝頃)六「五郎も、酌に手をかけ、『ちかくもまゐらぬ御酌に、時致たたん』とゆるぎたつ」
③ (「ぢかく」とも。数詞に付いて) ほぼその程度。ほぼその分量。また、ほぼその時期。
※明暗(1916)〈夏目漱石〉四六「玩具としては高過ぎる四円近(ヂカ)くの代価を払って」
[2] 〘副〙 遠からぬうちに。もうじき。まもなく。「近く結論が出るはずだ」
ちこう ちかう【近】
(形容詞「ちかい」の連用形「ちかく」のウ音便) 近く寄りなさいの意で、身分の高い武家などが下の者に対していう。多く、「近う近う」の形で感動詞的に用いる。
※浄瑠璃・本朝二十四孝(1766)一「氏時声かけヤレ待兼ねし村上、サアサア近う、近うに額際、つき合ふばかりに座をしめて」
きん【近】
〘名〙 現在より少し近い過去。最近。「近…(年)」のように用いられる。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「近四五十年前より、世界に金鉱を発見せる数よりは」
ちかま・る【近】
〘自ラ五(四)〙 近くなる。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉八「国会の開設も近まったれば」
ちかし【近】
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報