迷走神経反射(読み)メイソウシンケイハンシャ

デジタル大辞泉 「迷走神経反射」の意味・読み・例文・類語

めいそうしんけい‐はんしゃ【迷走神経反射】

外界からの刺激が、迷走神経求心性線維を介して脳の中枢に伝わり、遠心性線維によって末梢臓器効果器に防衛反応が生じること。
[補説]気管に刺激を受けたとき、声帯閉鎖に続いて急激な呼吸運動が起こり、せきが出る、というような反応がこれにあたる。また、排尿時に血圧が低下して失神するなど、過剰な反応によって身体に異常が生じることがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「迷走神経反射」の意味・わかりやすい解説

迷走神経反射
めいそうしんけいはんしゃ

自律神経反射の一つ。身体のさまざまな調節機構の制御に重要な役割を果たしている。たとえば咳嗽(がいそう)反射は気管粘膜や喉頭が刺激されて咳(せき)が出る反射で、刺激は上喉頭神経から迷走神経を介して下咽頭神経に伝えられる。また迷走神経を経由して起こる呼吸反射が肺迷走神経呼吸反射で、肺の伸展によって吸息の抑制が起こる肺膨張反射と、圧縮によって呼息が抑制され吸息が促される肺縮小反射の繰り返しによって、呼吸の深さおよび周期が制御されている。これはヘリング‐ブロイエルHering-Breuer反射ともよばれる。排尿に伴って血圧が下がるのも迷走神経反射によるものである。

 こうした反射は生命を維持しようとする正常な生理的防衛反応であるが、問題となるのは過剰な反応が起きる場合で、排尿による血圧低下も急に起こると失神をきたすことがある。また激しい疼痛(とうつう)やストレス、ショックなどによって迷走神経が過剰に刺激され自律神経に失調をきたす場合は、末梢(まっしょう)の血管拡張による血圧の低下や心拍数の低下が起こり、ときに徐脈から心停止に至る場合もある。採血時のショックから気分が悪くなって失神などを起こす場合があるが、これも貧血のためではなく血管迷走神経反射によるものなので注意が必要である。

[編集部]

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