退・除(読み)のける

精選版 日本国語大辞典 「退・除」の意味・読み・例文・類語

の・ける【退・除】

〘他カ下一〙 の・く 〘他カ下二〙
[一] のかせる。その位置から離れさせる。どかせる。離す。
① 今までいた場所を離れ去らせる。立ちのかせる。
※枕(10C終)二三七「立てる車どもをただのけにのけさせて」
② 距離をおかせる。間を隔てる。
徒然草(1331頃)二一九「この穴を吹く時は必ずのく。のけあへぬ時は物にあはず」
③ ほかの場所に移す。どける。とりはずす。
今昔(1120頃か)三「其の鉢、忽に女の鼻の上に付ぬ。取て去(のけむ)と為(す)るに、更に不落ず」
④ のぞく。はぶく。除外する。
※虎明本狂言・入間川(室町末‐近世初)「そのいるま言葉をのけて、まんぞくなか、満足になひかおしゃれ」
⑤ (「のけておく」の形で用いる) 別によせて残す。別にする。
洒落本古契三娼(1787)「榎堂で取れたなまこのけて置ておまする程の真実に、外心はなかりき」
[二] 補助動詞。動詞の連用形に「て」の付いた形に付いて「…てしまう」の意を表わす。
① しにくいことをあえてする意を表わす。
史記抄(1477)一八「焼て灰にないてのけて」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「情談のどさくさ紛れにチョックリチョイといって除(ノ)ける」
事態がはやくも、あるいは不本意にも起こってしまう意を表わす。
※京大二十冊本毛詩抄(1535頃)一八「小人が政をする程に政は乱てのくるぞ」
浄瑠璃・心中天の網島(1720)中「こりゃたわけ、お末はどこに置て来た。アアほんにどこでやらおとしてのけた」

のけ【退・除】

〘名〙 (動詞「のける(退)」の連用形の名詞化) のけること。また、そのもの。
評判記・野郎大仏師(1667‐68)吉河権十郎「かほばせのおもふやうになひ分はさらりとのけにしてどこやらあぢなおもしろき所有てゆかし」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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