進行波管(読み)シンコウハカン(英語表記)traveling wave tube

デジタル大辞泉 「進行波管」の意味・読み・例文・類語

しんこうは‐かん〔シンカウハクワン〕【進行波管】

極超短波増幅用の真空管。長い螺旋らせん状の導体中心電子流を貫通させ、その速度に合わせて導体に沿って電磁波を進行させ、電磁波と電子流との交互作用によって増幅作用を生じさせるもの。送信管レーダーなどに使用

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「進行波管」の意味・読み・例文・類語

しんこうは‐かん シンカウクヮン【進行波管】

〘名〙 マイクロ波増幅用の真空管。電子ビームとそれに沿ってほぼ等しい速度で進行する電波を作用させて増幅する。小電力でかなり広い周波数範囲にわたるマイクロ波の増幅、発振ができる。人工衛星の通信用に使われる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「進行波管」の意味・わかりやすい解説

進行波管 (しんこうはかん)
traveling wave tube

1940年代の初め,イギリスのコンフナーR.Kompfnerによって発明された極超短波(UHF以上)の広周波数帯域増幅管。TW管ともいう。通常の増幅器では,共振回路を用い,集中的に電子流と相互作用を行うので周波数帯域幅が狭い。進行波管では,進行する電波と電子流とをある長さにわたって相互作用を行わせる。電波の速度が広い周波数範囲にわたりほぼ一定であれば,広帯域性が得られる。低い単位長あたりの増幅度は,長さによって稼ぐ。進行電波の回路である導波管などは,位相速度光速より速い。したがって,これを電子の速度とほぼ同じにするために,遅波回路を用いなければならない。らせん回路はその代表的なもので,軸上の電波速度が,らせんのピッチと周との割合で光速より減速され,1オクターブ程度の広い周波数帯域が得られる。らせん回路は耐熱性が低いので,小電力用に適し,数Wから数百W程度までである。kW級には円形または矩形導波管を変形したろ波器形回路が用いられる。マイクロ波の地上および人工衛星の通信用に使われている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「進行波管」の意味・わかりやすい解説

進行波管
しんこうはかん
travelling-wave tube

電子ビームと伝播電磁波との相互干渉を利用してマイクロ波の増幅を行わせる電子管。陰極から出た電子は陽極によって加速され,細長い真空ガラス管中の金属螺旋内を走る。一方,陰極側からこの螺旋に印加されたマイクロ波は螺旋の金属線に沿って進むので,マイクロ波電磁界の管軸方向の速度は遅くなっている。この電磁界と電子ビームの速度がだいたい同じになるように設計すると,電子を加速する電界は電子を常に加速し,逆方向の電界は電子を常に減速しながら進むので,一定密度で陰極を出た電子は次々に疎と密な部分に分けられる。言い換えると,加速電界の前方あるいは減速電界の後方に電子が密集する (電子は負の電荷をもっているので,マイクロ波電界の方向と電子の加速度の方向とは逆である) 。電子ビームの速度がマイクロ波電界の速度より少し速くなるように調節すると,電子はその前方にある減速電界に逆らって進むことになる。したがって,電子はその運動エネルギーを失い,電磁波にエネルギーを与え,増幅されたマイクロ波が出力端子から取出されることになる。なお,集束コイルによって管軸方向に磁界が加えられているのは,電子ビームの散逸を防ぐためである。また,利得を大きくすると,内部帰還のため安定な増幅が行えなくなるので,螺旋の外側に減衰部 (抵抗体) が設けられている。 (→後進波管 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「進行波管」の意味・わかりやすい解説

進行波管【しんこうはかん】

TW管とも。進行波増幅を行うマイクロ波真空管の一つ。電子銃によるビーム状電子流を囲んでらせん状の導線が配置されこれに入力信号が送られる。信号はこの線路上を進行波となって進む間に電子流に作用してそれに疎密を生じさせ,この疎密が逆に線路上の信号波に働きかけ,さらに電子流に作用し,これを繰り返すことにより増幅作用を起こす。共振器がないので広い周波数範囲にわたってマイクロ波の増幅ができる。→クライストロン
→関連項目電子管

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android