道後温泉(読み)どうごおんせん

精選版 日本国語大辞典 「道後温泉」の意味・読み・例文・類語

どうご‐おんせん ダウゴヲンセン【道後温泉】

愛媛県松山市にある温泉。上代から伊予温湯(いよのゆ)熟田津石湯(にぎたづのいわゆ)の名で知られている。泉質は単純泉。

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デジタル大辞泉 「道後温泉」の意味・読み・例文・類語

どうご‐おんせん〔ダウゴヲンセン〕【道後温泉】

愛媛県松山市にある温泉。万葉集にみえる伊予の湯。泉質は単純温泉夏目漱石の「坊っちゃん」の舞台。

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日本歴史地名大系 「道後温泉」の解説

道後温泉
どうごおんせん

[現在地名]松山市道後湯之町

松山平野の東北端にある温泉。古代には伊予温湯いよのゆ熟田津石湯にきたつのいわゆといわれた(日本書紀、万葉集、「伊予国風土記」逸文)。律令体制下で国府を中心として都に近い地域を道前どうぜんといったのに対し、遠い方を道後とよんだ。中世の記録では、野間のま風早かざはや・温泉三郡以西の広い地域を総称している(予章記、予陽河野家譜、「河野家譜」築山本)。この地域名が狭い温泉湧出地付近の地名に限定されたのは、明確には近世に入ってからのことである。

源泉の発見は白鷺によるとの伝承がある。負傷した白鷺が温泉に浴しているうちに治癒して元気になって飛び去ったのを見て、地方民がその効験の著しいのに驚嘆したのに始まるという(予陽郡郷俚諺集)。その伝説地を鷺谷さぎだにとよび、伝承を記念するため鷺石と称する石が保存されている。

〔古代〕

「伊予国風土記」逸文によると、大己貴命・少彦名命の二神が相携えて伊予へ来たとき、少彦名が重病となった。大己貴は小躯の少彦名を湧き出る湯で療養させたところ、快癒してもとの健康体になったとの説話を載せている。この二神を奉斎したのが温泉に隣接する式内社神社である。

さらに同書は、景行天皇と皇妃八坂入姫、仲哀天皇と皇后息長足媛(神功皇后)聖徳太子舒明天皇と皇后、斉明天皇と中大兄・大海人両皇子らの道後来浴の説話を載せている。このうち景行および仲哀両天皇の来浴は傍証する史料がなく、史実とは認められない。

聖徳太子は僧恵慈および葛城臣らを従えて道後に来浴し、湯岡すなわち伊社爾波いさにわ(のちには伊佐爾波岡とも書いた)に温泉の碑を建立したといわれる。この碑は現存しないが、文章は「伊予国風土記」逸文に載せられている。

<資料は省略されています>

聖徳太子の道後来浴によって、新文化を表徴する寺院がこの地に創建されるようになったと伝えられる。それは温泉の北西方にある祝谷の田高いわいだにのたこうから、堂宇の礎石および百済式単弁蓮華文瓦・複弁蓮華文瓦が発掘されているので知られる。これらの瓦は、飛鳥時代の大和地方の寺院跡から出土したものに酷似している。また温泉の東方にあたる上市の内代かみいちのうちだいから礎石と複弁蓮華文瓦が発見されている。文献がないため二廃寺の名称・規模はわからないが、これらの遺物によって、温泉を挟んで東西に伽藍が併存し、二寺を中心としてこの地に仏教文化が栄えたと推察することができる。

それからおよそ半世紀のちに、舒明天皇が皇后とともに来浴した。「日本書紀」に、

<資料は省略されています>

とある。「伊予国風土記」逸文には、天皇は行宮にあって、むく臣木おみのきに稲穂をかけて、いかるが此米鳥しめどりを飼育したという優雅な説話が書かれている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「道後温泉」の意味・わかりやすい解説

道後温泉
どうごおんせん

愛媛県松山市にある温泉。温泉の歴史は古く、「伊予温湯(いよのゆ)」「熟田津石湯(にぎたつのいわゆ)」などという。『日本書紀』『万葉集』『伊予国風土記(ふどき)』逸文、『源氏物語』などにその記述がみられ、日本最古の温泉の一つである。火山性温泉とは異なり、領家花崗(りょうけかこう)岩帯に貫入した黒雲母(くろうんも)花崗岩裂け目から湧出(ゆうしゅつ)する温泉である。道後湯之町(ゆのまち)を通り、北西―南東方向に断層があって、源泉の多くはこの破砕帯にあり、十数か所現存する。断層の上部は厚い沖積層に覆われているので、源泉垂直深度は大きく300~500メートルに達する。泉質は単純アルカリ質、湧出量は毎分100~200リットルだが変動がある。1946年(昭和21)の南海地震では一時湧出が停止した。道後温泉本館(振鷺閣(しんろかく))は明治中期の建物で国指定重要文化財。神之湯、霊之湯(たまのゆ)、休憩所からなる共同浴場である。ほかに数か所の共同浴場があり、旅館・ホテルは約100軒を数える。各種娯楽施設、土産(みやげ)物店などがあり、一大温泉街をなしている。JR予讃(よさん)線松山駅から伊予鉄市内線が通じる。

[深石一夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「道後温泉」の意味・わかりやすい解説

道後温泉
どうごおんせん

愛媛県中部,松山市街地の東,石手川沿いにある温泉。松山平野の北東部に位置する。歴史は古く『万葉集』にも記述がみられる。泉質はアルカリ単純泉。泉温は 50℃前後。神経痛,胃腸病などにきく。明治期から 1955年頃まで湯量が少く公営の共同浴場だけであったが,現在ではボーリングにより増量し,内湯化が進んだ。 1892年から3年半かけて建築された木造3階建ての道後温泉本館 (重要文化財) は温泉情緒豊かな共同浴場で,夏目漱石の小説『坊つちやん』の舞台としても有名。四国ばかりでなく全国各地から観光客が多く,上流域は奥道後温泉に続く。付近には道後公園や史跡の松山城跡四国八十八ヵ所第 51番札所の石手寺がある。

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事典・日本の観光資源 「道後温泉」の解説

道後温泉

(愛媛県松山市)
日本三古湯」指定の観光名所。

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