還元(哲学)(読み)かんげん(英語表記)Reduktion ドイツ語

百科事典マイペディア 「還元(哲学)」の意味・わかりやすい解説

還元(哲学)【かんげん】

思考の対象をそれと等値な対象によって置き換えたり,その本質性質を取り出したり,それを構成するより純粋単純な要素に分かつこと。三段論法の第2格以下を第1格に還元する(還元法,改格法,変格法),推論一連直観に還元するなど。フッサールにおいては,さまざまの先入見を去って事象そのものに向かうこと。対象を個別的多様性においてではなく,その本質においてみる形相的還元eidetische Reduktionと,自然的態度括弧に入れ,そのあとに残る純粋意識の領域を取り出す現象学的還元とがある。→還元主義

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「還元(哲学)」の意味・わかりやすい解説

還元(哲学)
かんげん
Reduktion ドイツ語

哲学のすべての問題は、結局、「世界と人間」という問題に帰着し、しかもその際、人間が経験し知る限りでの世界は、人間の意識体験を通して「現象」する以外にない。意識とよばれる自然の光なしには、なにものも照らされ開示されはしない。それゆえ、「意識」に世界経験(事物経験や他者経験)の可能性の制約根拠を求めるのは、デカルトやカント以来、哲学の常道である。フッサールの「現象学的還元」理論によれば、意識=現象のうちに世界が現出してくる機制、世界現象の可能性の制約をみるためには、「できあがった」対象物から、それを「本源的に与える」意識にすべてをまず「還元」すべきである。

 なお、現象学とは別に論理実証主義でいわれる還元もあるが、これは、科学上の有意味な概念命題が、形而上(けいじじょう)学的な主張とは違って、検証可能な観察命題集合に「還元」可能であることをさす。

[山崎庸佑]

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