重信川(読み)シゲノブガワ

デジタル大辞泉 「重信川」の意味・読み・例文・類語

しげのぶ‐がわ〔‐がは〕【重信川】

愛媛県中央部を流れる川。高縄半島東三方ヶ森ひがしさんぽうがもり(標高1233メートル)南麓に源を発し、ほぼ南西流して松山平野に出て西に流れを変え松山市南部で伊予灘に注ぐ。長さ36キロ。伏流水による湧泉が多く、灌漑かんがい水として利用されている。四国でも有数の荒れ川で、古くから洪水が絶えなかったが、近世初期に松山藩足立重信が河川を改修、彼の死後、それまでの伊予川を重信川というようになった。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「重信川」の解説

重信川
しげのぶがわ

温泉おんせん周桑しゆうそう越智おち三郡の境界にそびえる東三方ひがしさんぽうもり(一二三二・七メートル)付近に発して温泉郡重信町を南流、見奈良みなら付近で西流して松山市に入り、伊予市との境をなしつつ松山平野を貫流、伊予灘に注ぐ。幹線流路はわずか三六キロだが、支流数七五、流域面積四四五平方キロに及び、中予地域に占める水利上の役割は大きい。東からは、おもて川が割石わりいし峠付近に発して諸川を合しつつ川内かわうち町域を流れて、見奈良付近で重信川に入る。南からは、上尾うえび峠付近に発する砥部とべ川が伊予郡砥部町を北流、下流三坂みさか峠からの御坂みさか川を加えて重信川に入る。東三方ヶ森の西から西南にかけて白潰しらつえ(一一五六メートル)明神みようじんもり(一二一六・九メートル)福見ふくみ(一〇五三メートル)の高峰が連なり、西部を流れる支流石手いして川との流域を限っている(松山市の→石手川

上流部の重信町では山之内やまのうち付近の河床勾配が急で流出土砂の量が多く、流路が至るところで急変するため川沿いに多量の堆積物をもたらすが、とくに平野部に入る大畑おおばたけ扇頂として横河原よこがわら付近には南北約四キロ、東西約六キロに及ぶ扇状地が形成されている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「重信川」の意味・わかりやすい解説

重信川
しげのぶがわ

愛媛県中央部の松山平野を流れる川。一級河川。延長36キロメートル、流域面積445平方キロメートル。高縄(たかなわ)半島中央の東三方ヶ森(1233メートル)南麓(なんろく)に発し、松山市南部で伊予灘(なだ)に注ぐ。流域は花崗(かこう)岩の崩壊地が多く、河川運搬物が多い。また左岸で重信川に合流する井内川、拝志(はいし)川、久谷(くたに)川、砥部(とべ)川は、中央構造線に沿う大断層崖(がい)と石鎚(いしづち)第三紀層の地すべり地帯を流域にもち、いずれも平野周辺に扇状地、洪積台地を形成する。このため重信川は四国でも有数の荒れ川で、古くから洪水が絶えなかった。近世初期に松山藩の足立重信(あだちしげのぶ)(?―1625)がこの荒れ川を改修したので、1625年(寛永2)以来重信川と称するようになったとされる。

[深石一夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「重信川」の意味・わかりやすい解説

重信川 (しげのぶがわ)

愛媛県中央部を西流する川。幹川流路延長36km,全流域面積445km2。今治,西条,東温3市の境界をなす東三方ヶ森(1233m)に水源を発し,ほぼ南西流して東温市の旧重信町見奈良付近で東から表川を合わせて西に流路を変え,砥部(とべ)川,石手川などの支流を合流して松山平野南部を流れ,松山市の南で伊予灘に注ぐ。流域面積の約8割を占める山地は崩壊性の地質よりなるものが多く,四国地方では例をみない荒れ川として知られる。旧重信町横河原付近に形成された扇状地は砂礫層が厚く堆積して天井川となり,平時は伏流しほとんど表流水がみられない。古くは伊予川と称したが,文禄・慶長期(1592-1615)ころに松山藩主加藤嘉明の重臣足立重信が改修したことから,その功績をたたえ重信川と改められた。改修工事は,加藤氏の後,蒲生氏,松平氏と松山藩主に引き継がれ,どの部分が重信の施工かは定かではないが,改修前の伊予川は松山市高井付近から現在の流路の南方を麻生(あそう),八倉,徳丸,出作,大溝を経て松前(まさき)の南で伊予灘に注いでいたと考えられている。明治以後もたび重なる洪水の被害があり,1945年より改修工事が進められた。流域の松山平野の灌漑は溜池が少なく,重信川の豊富な伏流水に依存するものが多い。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「重信川」の意味・わかりやすい解説

重信川【しげのぶがわ】

愛媛県北部の川。長さ36km。高縄半島の東三方ヶ森に発して南西流し,重信町(現・東温市)横河原付近にみごとな扇状地をつくり,松山平野を西流して,松山市で伊予灘に注ぐ。古くは伊予川といい,慶長年間(1596年―1615年)河道の改修をした足立重信にちなみ改称。伏流水が豊富で,灌漑(かんがい),上水道に利用。
→関連項目愛媛[県]川内[町]重信[町]松前[町]松山[市]

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「重信川」の意味・わかりやすい解説

重信川
しげのぶがわ

愛媛県松山平野を西流し,伊予灘へ注ぐ川。高縄山地の東三方ヶ森 (ひがしさんぽうがもり。 1233m) 付近を源とする。全長 36km。かつては伊予川といったが,改修に功のあった松山藩の重臣足立重信の名をとって寛永2 (1625) 年に重信川と改称。伏流水の湧泉が多く,灌漑に用いられる。河口の北に松山空港がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android