野村芳太郎(読み)ノムラヨシタロウ

デジタル大辞泉 「野村芳太郎」の意味・読み・例文・類語

のむら‐よしたろう〔‐よしタラウ〕【野村芳太郎】

[1919~2005]映画監督製作者。京都の生まれ。映画監督野村芳亭の長男。「張込み」「影の車」「砂の器」など、松本清張の小説を映画化し、評価を得る。製作者としては、山田洋次監督「キネマの天地」などを手がけた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「野村芳太郎」の意味・わかりやすい解説

野村芳太郎
のむらよしたろう
(1919―2005)

映画監督。京都市に生まれる。父の野村芳亭(ほうてい)(1880―1934)は松竹映画のパイオニア的存在。1941年(昭和16)慶応義塾大学卒業後、松竹大船撮影所に入る。『鳩(はと)』(1952)で監督デビュー、清新さを注目される。以後はプログラム・ピクチャーの職人監督として多種多様な作品を量産するが、なかでもミステリー映画に真価を発揮。松本清張(せいちょう)原作・橋本忍(しのぶ)脚本の『張込み』(1958)、『影の車』(1970)や、犯罪とそれを生み出す風土との関係を抒情的に描いた『砂の器』(1974)で評価を獲得。松本清張原作にはほかに『鬼畜』(1978)、『疑惑』(1982)、『迷走地図』(1983)などがある。大岡昇平原作の裁判劇である『事件』(1978)もこの系列の作品。アガサ・クリスティのミステリーを映画化した『危険な女たち』(1985)以降は、製作者として活躍。山田洋次監督の『キネマの天地』(1986)などをプロデュースした。

[佐伯知紀]

資料 監督作品一覧

鳩(1952)
春はキャメラに乗って(1952)
次男坊(1953)
愚弟賢兄(1953)
きんぴら先生とお嬢さん(1953)
鞍馬天狗 青面夜叉(あおめんやしゃ)(1953)
青春三羽烏(1953)
慶安水滸伝(すいこでん)(1954)
伊豆の踊子(1954)
青春ロマンスシート 青草に坐す(1954)
びっくり五十三次(1954)
大学は出たけれど(1955)
おとこ大学 新婚教室(1955)
亡命記(1955)
東京―香港蜜月旅行(1955)
花嫁はどこにいる(1955)
太陽は日々に新たなり(1955)
角帽三羽烏(1956)
旅がらす伊太郎(1956)
次男坊故郷へ行く(1956)
花嫁募集中(1956)
ここは静かなり(1956)
千万長者の恋人より 踊る摩天楼(1956)
伴淳・森繁の糞尿譚(ふんにょうだん)(1957)
花嫁のおのろけ(1958)
張込み(1958)
月給一三、〇〇〇円(1958)
モダン道中 その恋待ったなし(1958)
どんと行こうぜ(1959)
銀座のお兄ちゃん挑戦す(1960)
黄色いさくらんぼ(1960)
鑑賞用男性(1960)
最後の切札(1960)
ゼロの焦点(1961)
恋の画集(1961)
背徳のメス(1961)
春の山脈(1962)
左ききの狙撃者 東京湾(1962)
あの橋の畔で(1962)
あの橋の畔で 第2部(1962)
あの橋の畔で 第3部(1963)
拝啓天皇陛下様(1963)
あの橋の畔で 完結篇(1963)
続拝啓天皇陛下様(1964)
拝啓総理大臣様(1964)
五辧(ごべん)の椿(1964)
素敵な今晩わ(1965)
望郷と掟(1966)
暖流(1966)
おはなはん(1966)
おはなはん 第二部(1966)
命果てる日まで(1966)
あゝ君が愛(1967)
女たちの庭(1967)
女の一生(1967)
男なら振りむくな(1967)
夜明けの二人(1968)
白昼堂々(1968)
コント55号と水前寺清子の神様の恋人(1968)
でっかいでっかい野郎(1969)
ひばり・橋の花と喧嘩(けんか)(1969)
コント55号と水前寺清子のワン・ツウー・パンチ 三百六十五歩のマーチ(1969)
チンチン55号ぶっ飛ばせ!! 出発進行(1969)
影の車(1970)
三度笠だよ人生は(1970)
こちら55号応答せよ! 危機百発(1970)
なにがなんでも為五郎(1970)
コント55号と水前寺清子の大勝負(1970)
やるぞみておれ為五郎(1971)
花も実もある為五郎(1971)
コント55号とミーコの絶体絶命(1971)
初笑い びっくり武士道(1972)
しなの川(1973)
ダメおやじ(1973)
東京ド真ン中(1974)
砂の器(1974)
昭和枯れすすき(1975)
八つ墓村(1977)
事件(1978)
鬼畜(1978)
配達されない三通の手紙(1979)
わるいやつら(1980)
震える舌(1980)
真夜中の招待状(1981)
疑惑(1982)
迷走地図(1983)
ねずみ小僧怪盗伝(1984)
危険な女たち(1985)

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百科事典マイペディア 「野村芳太郎」の意味・わかりやすい解説

野村芳太郎【のむらよしたろう】

映画監督。東京生れ。父は映画監督の野村芳亭。慶応大卒業後,1941年松竹入社。《鳩》(1952年)が第1作。《ひばりのびっくり五十三次》(1953年)や《伴淳・森繁の糞尿譚》(1957年)などの喜劇を監督した後,松本清張原作の社会派推理ドラマ《張込み》(1958年)で注目される。その後も《ゼロの焦点》(1961年),《影の車》(1970年),《砂の器》(1974年),《鬼畜》(1978年)など松本清張作品による秀作を発表。ほかに渥美清主演の喜劇《拝啓天皇陛下様》(1963年)などがある。
→関連項目勝新太郎山田洋次

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「野村芳太郎」の解説

野村芳太郎 のむら-よしたろう

1919-2005 昭和後期-平成時代の映画監督。
大正8年4月23日生まれ。野村芳亭の長男。昭和16年松竹に入社。27年「鳩」で監督デビュー,「伊豆の踊子」「糞尿譚」などで注目された。33年の「張込み」以後,「ゼロの焦点」「影の車」「砂の器」などサスペンスもの,「為五郎」シリーズなど喜劇も手がけた。平成17年4月8日死去。85歳。東京出身。慶大卒。

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