金剛童子(読み)こんごうどうじ

精選版 日本国語大辞典 「金剛童子」の意味・読み・例文・類語

こんごう‐どうじ コンガウ‥【金剛童子】

[1] (Vajra-kumāra の訳語) 仏語胎蔵界曼荼羅で、金剛手院の金剛鏁菩薩の左に配する護法神。総じて、童形で手に金剛杵(こんごうしょ)を持ち、左足をあげて忿怒の相を作る。台密では二臂黄色の黄童子、東密では六臂青色身の青童子を用いる。
※高野本平家(13C前)二「南無権現金剛童子(コンガウドウジ)、願はくは憐みをたれさせおはしまして」
※とはずがたり(14C前)一「大法ひ法のこりなくおこなはる、七仏薬師、五たんの御修法、普賢延命、金剛童子、如法愛染王などぞきこえし」

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デジタル大辞泉 「金剛童子」の意味・読み・例文・類語

こんごう‐どうじ〔コンガウ‐〕【金剛童子】

《〈梵〉Kaṇikrodha; Vajra-kumāraの訳》密教の護法神。童形で怒りの相を表し、二臂にひ・六臂があり、二臂のものは左手三鈷杵さんこしょを持つ。阿弥陀仏化身ともいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「金剛童子」の意味・わかりやすい解説

金剛童子 (こんごうどうじ)

サンスクリット名はカニ・クローダKani-Krodhaといい,無量寿仏あるいは金剛薩埵(さつた)の化身とされる。金剛童子法は調伏息災を祈る密教の修法である。金剛童子を単独で説いた経典は,金剛智訳と不空訳の2種があり,前者には黄色身の二臂(にひ)像,後者には青色身の六臂像が述べられている。これらは黄童子,青童子ともいわれ,黄童子は主として台密において,青童子は主として東密において用いられると伝える。二臂像は三鈷(さんこ)を持つ左手を高く振り上げ,右手は伸ばして下げ施無畏(せむい)印とする。作例には園城寺蔵《黄金剛童子像》がある。六臂像は海中の岩の上に片足をのせ,一方の足を波に洗わせながら海に立つ姿を表現する。醍醐寺には信海が1280年(弘安3)に描いた白描図像《金剛童子像》が現存する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金剛童子」の意味・わかりやすい解説

金剛童子
こんごうどうじ

金剛杵(しょ)に秘められた威力を影像化した金剛部の忿怒(ふんぬ)形の童子。サンスクリット語ではバジラクマーラVajra-kumāraあるいはカニクローダKai-krodhaという。阿弥陀(あみだ)仏の化身(けしん)といわれ、形像は蔵王権現(ざおうごんげん)に似る。二臂(ひ)または六臂像。二臂像は天台宗の園城寺(おんじょうじ)(三井寺(みいでら)、大津市)所伝といい黄童子で、左足を高くあげ、空中を踏み(丁字立(ていじだて))、両手を大きく開く。とくに左手に三鈷杵(さんこしょ)を持ち、右足は青蓮華(れんげ)座を踏む。六臂像は東密系で青童子という。二臂像は園城寺に作例が、六臂像は醍醐寺(だいごじ)(京都市)に信海筆の白描図像が伝存する。

[真鍋俊照]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金剛童子」の意味・わかりやすい解説

金剛童子
こんごうどうじ
Kaṇi-krodha

西方無量寿仏の化身といわれる忿怒の童子形をした仏教守護神。胎蔵界曼荼羅の金剛手院に置かれ,金剛杵を持っている。

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