金華山(読み)きんかざん

精選版 日本国語大辞典 「金華山」の意味・読み・例文・類語

きんかざん キンクヮザン【金華山】

[1]
[一] (「きんかさん」とも) 宮城県、牡鹿(おしか)半島の東側沖合にある島。黄金山(こがねやま)神社があり、野生のシカ、サルが生息する。古称陸奥山。
[二] 岐阜市の市街地の北東部にある山。山頂に岐阜城があった。稲葉山。破鏡山。一石山。
[2] 〘名〙
① 茶道で用いる茶入の一種。永仁年間(一二九三‐九九)、瀬戸の陶工三代藤四郎景国が焼いた瀬戸茶入の総称。岐阜市内金華山の土を用いたための呼称といわれる。
※雑俳・柳多留‐八四(1825)「夜軍で妾せめおとす金華山」

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デジタル大辞泉 「金華山」の意味・読み・例文・類語

きんか‐ざん【金華山】[岐阜の山]


きんかさん(金華山)
岐阜市北東部にある山。標高329メートル。長良川の南岸に位置し、山頂に岐阜城址がある。稲葉山。

瀬戸焼の3代藤四郎の土を用いて焼いたと伝えられる茶入れの称。
金華山織り」の略。

きんか‐さん【金華山】[宮城の島]

《「きんかざん」とも》宮城県の牡鹿おしか半島の東に位置する島。面積約9平方キロメートル、最高地点445メートル。西麓に黄金山こがねやま神社がある。沖合は暖流と寒流の交わる好漁場。

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日本歴史地名大系 「金華山」の解説

金華山
きんかざん

岐阜市中央部を貫流する長良川の南岸に位置。稲葉いなば山・因幡いなば山などともよばれ、標高三二八・九メートル。平地から急に立上がり、山容険しく、とくに西・北側はやせた尾根と狭く深い谷が連続する。古生層からなり、山頂一帯には斎藤氏・織田氏などの築城による山城(岐阜城)があった。全山鳥獣保護区に指定されており、全体の約六〇パーセントは椎・樫などの常緑広葉樹で覆われている。西麓には岐阜公園があり、山頂とロープウェーで結ばれている。山頂からは長良川・岐阜市街を眼下に、濃尾平野、遠く長野県境の山々が展望できる。

「新撰美濃志」に「町の東にありて因幡山とも書き又金花山、破鏡山、一石山などとも喚べり。山の峯別なる故南の方権現のましますをいなば山といひ、北の方古城跡なるを金華山と喚べるはわろし。幾峯ありてもみないなば山、一名金花山なり。北の方の丸山にもと権現の鎮座ありしをのち今の地に遷座ありしにて、丸山がいなば山の本所なるよしを知るべし」とある。山名の由来については諸説あるが、いずれも伝説の域を出ない。

金華山
きんかさん

牡鹿半島南東端の太平洋上に位置する島。最高点はほぼ中央で、標高四四四・九メートル、周囲二六キロ、面積約一二平方キロ。全島ほとんど花崗岩からなる円錐状の多樹峰。山は五峰に分れ、全山原生林に覆われ、特別鳥獣保護地区に指定されている。野生のニホンジカニホンザルが共棲し、そのほかワシ、タカをはじめ一〇〇種類以上の鳥類が生息している。「観蹟聞老志」に「陸奥山みちのくやま。今曰之金華山」とあり、金華山を陸奥山ともよんだ。金華山は天平勝宝元年(七四九)四月一日陸奥国小田おだ郡から黄金が貢献され(続日本紀)大伴家持が詠んだ「天皇すめろきの御代栄えむとあづまなる陸奥みちのく山にくがね花咲く」(「万葉集」巻一八)に近世以来結び付けられ、その産金地であるとする考えが一般的であった。「観蹟聞老志」をはじめ、大淀三千風の「松島眺望集」、西鶴の「一目玉鉾」、大槻玄沢の「夢遊金華山之記」なども産金の陸奥山すなわち金華山を自明のこととしている。「おくのほそ道」にも「こがね花咲とよみ奉たる金花山海上に見わたし」とあり、江戸時代の文献の多くが「金花山」と記している。昭和三二年(一九五七)の発掘調査の結果、真の産金地は遠田とおだ涌谷わくや町涌谷の黄金迫こがねはざまにある黄金山こがねやま神社付近と確認された。

金華山にある黄金山神社は「延喜式」神名帳に記載される小田郡黄金山神社とは別のものであるが、金華山は従来から信仰の対象とされてきた。

金華山
きんかざん

八金やかねのうち八子やこ集落の北東にあり、標高三五七・五メートルの孤立峰。金花山とも書き、かつては権現ごんげん山ともいった。新第三紀の集塊岩からなる山で、山頂付近は岩肌が露出し、山頂からの眺望もよく、中腹には洞窟状の地形もあって古くからの信仰の対象とされ、修験道の道場として知られていた。金華山の名称は山岳信仰とくに熊野信仰につながるものに多く、当山の山頂にも金華山神社および熊野神社(古くは蔵王権現・熊野権現と称された)が祀られている。

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改訂新版 世界大百科事典 「金華山」の意味・わかりやすい解説

金華山 (きんかざん)

宮城県東部の石巻市に属する島。〈きんかさん〉ともいう。太平洋に浮かび,牡鹿(おしか)半島とは幅約1kmの金華山瀬戸(金華山水道,山鳥の渡ともいう)でへだてられる。面積約9km2,周囲約26km。花コウ岩および花コウ片麻岩よりなり,島の中央に金華山(444m)がそびえる。西側中腹に黄金山(こがねやま)神社があり,749年(天平勝宝1)陸奥国で日本最初の産金が朝廷に献納された際,産金地の遠田郡涌谷町の黄金迫(こがねはさま)に黄金宮が建てられたが,天平勝宝年間にこの島にも黄金山神社が建てられたと伝える。島の周囲には傾動した隆起海食台の平たん面があり,海岸は直接太平洋に洗われて,千畳敷岩や賽の磧(さいのかわら),大箱崎,仁王崎などの奇勝を作っている。ケヤキ,ブナ,モミ,ヤマハンノキなどが密林をなし,野生の猿,鹿が生息している。東方の太平洋海上は暖流と寒流の交わる金華山沖漁場として知られ,島の南東には1876年に建設された金華山灯台がある。石巻,女川(おながわ),石巻市の旧牡鹿町鮎川から船が通じる。
執筆者:

金華山沖合は日本有数の漁場として,また金華山周辺は奥の海と呼ばれる航海の難所として知られ,金華山は古来漁業や航海に際しての目標とされてきた。このため金華山は漁業・航海の守護神とされ,出漁には必ず金華山に参詣してから出航したと伝え,沖合でも日没時には金華山に向かって水をまき灯明を上げるならわしであったという。金華山の中腹には黄金山神社,山頂には大海祇(おおうみつみ)神社が鎮座しているが,近世期にはそれぞれ真言宗大金寺竜蔵権現と呼ばれ,弁財天をまつる山として信仰を集めてきた。金華山信仰は修験者の布教などによって沿岸部はもちろんのこと,農村部にも広く浸透し,東北地方一帯に金華山講が分布している。その信仰には金運の神,福神としての性格も強く,その要因として弁財天をまつること以外に,その立地条件によって東方海上の理想郷と観念されたり,古代陸奥国の黄金産出と結びついて黄金の島と観念されてきたことなどが考えられる。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「金華山」の意味・わかりやすい解説

金華山【きんかざん】

宮城県牡鹿郡牡鹿町(現・石巻市)に属し,牡鹿半島の南東に金華山瀬戸を隔てて浮かぶ島。面積9.92km2。最高点は金華山(444m)。花コウ岩からなり海岸に海食崖が発達,全山クロマツにおおわれ,シカ,サルが生息。749年貢献された黄金を産した山とされ,《おくの細道》にも金花山とみえる。金華山西麓に延喜式内古社の黄金山神社,鮑荒(あわびあれ)崎に灯台がある。沖合は全国有数の漁場。鮎川,女川(おながわ)から定期船便があり観光地としてにぎわう。
→関連項目石巻[市]牡鹿[町]牡鹿半島南三陸金華山国定公園宮城[県]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金華山」の意味・わかりやすい解説

金華山
きんかざん

宮城県東部,牡鹿半島から幅 1kmの金華山瀬戸を隔てて浮かぶ島。標高 445m。石巻市に属する。花崗岩と花崗片麻岩からなる山地性の島。クロマツ,モミ,ブナが茂り,野生のシカ,サルが生息。山の西斜面 150mにある黄金山神社は財宝の守護神,開運の神として信仰があつく,参詣者が多い。島内は奇岩,怪石が多く,眺望もよい。三陸復興国立公園に属する。女川,鮎川から船便がある。面積 9.92km2。人口 17(2020)。

金華山
きんかざん

稲葉山ともいう。岐阜市街の北東郊,長良川の南岸にある山。標高 339m。全山古生層の角岩から成る。古来美しい山容として有名。頂上には岐阜城址があり,眺めがよい。 1956年コンクリート建て4階の天守閣と天文台が再建された。この城は,戦国時代斎藤,織田氏の居城となり,関ヶ原の戦い以後は廃城となった。現在は観光地で,山頂までロープウェーが通り,公園となっている。

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事典 日本の地域遺産 「金華山」の解説

金華山

(岐阜県岐阜市)
日本夜景遺産」指定の地域遺産。
標高329m。「金華山展望公園」からは濃尾平野の夜景を楽しめる。山頂には岐阜城が立ち、時期によりロープウェイの夜間営業もある

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事典・日本の観光資源 「金華山」の解説

金華山

(岐阜県岐阜市)
21世紀に残したい日本の自然100選」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の金華山の言及

【牡鹿[町]】より

…人口5891(1995)。牡鹿半島の南半と金華山,網地(あじ)島からなる。平地がほとんどなく,産業の中心は漁業である。…

※「金華山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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