鉄シリサイド半導体(読み)テツシリサイドハンドウタイ

化学辞典 第2版 「鉄シリサイド半導体」の解説

鉄シリサイド半導体
テツシリサイドハンドウタイ
iron silicide semiconductor

禁制帯幅が0.85 eV の直接遷移型半導体であり,近年,環境半導体とよばれ,太陽電池や熱電変換素子材料として注目を集めている.GaAsInPなどの半導体は太陽電池や発光・受光デバイスとして使われているが,資源寿命が短いとされるAsやInを含んでいることと,Asは廃棄時に問題を生じることなどから環境に対して負荷が高いといわれる.地球上に大量に存在するMg,Fe,Cu,Si,C,Znなどの材料を用いて半導体をつくれば,プロセスから廃棄までを考えても環境に対して低負荷とすることができるので,これらから構成される半導体を環境半導体とよぶ.とくにSiとFeから構成される半導体鉄シリサイド(FeSi2)には,α相とβ相の二つがある.α相は940 ℃ 以上で安定であり,正方晶系の構造をとり,抵抗率が約250 Ω cm の金属となる.β相は斜方晶系の構造をとり,単位胞内にFe原子16個とSi原子32個を含む複雑な構造である.しかし,β相であるβ-FeSi2はSiの(001)と(111)基板上で,エピタキシャル成長(エピタキシー)することから,薄膜デバイスへの応用が試みられている.FeもSiも融点が高く蒸気圧が非常に低いことから,従来の分子線エピタキシー法や有機金属気相エピタキシャル成長法が難しく,イオン注入法や熱反応堆積法が用いられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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