鉄ミョウバン(読み)てつミョウバン(英語表記)iron alum

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

鉄を含むミョウバン、すなわちMFe(SO4)2・12H2O(Mは一価陽イオン)で表される複塩の総称であるが、通常はM+がカリウムイオンK+の場合、すなわちカリウム鉄ミョウバンpotassium iron alumをさす。しかし、化学工業方面ではM+がアンモニウムイオンNH4+の場合、すなわちアンモニウム鉄ミョウバンammonium iron alumをいうことが多い。結晶は一般に淡紫色を呈する。これは構造単位として存在するヘキサアクア錯イオン[Fe(H2O)63+に由来する。硫酸鉄(Ⅱ)の水溶液に硫酸と硝酸を加えて酸化し、硫酸カリウムや硫酸アンモニウムを加えて濃縮すると、それぞれの鉄ミョウバンが得られる。カリウム鉄ミョウバンは乾燥空気中で容易に水分子を失い、結晶に濁りを生ずる。加熱により70℃で一水和物となる。アンモニウム鉄ミョウバンは加熱により150℃で11.5分子の結晶水を失い、230℃で無水和物となる。アルコールには溶けない。媒染剤に用いるほか、医薬品や試薬としての用途がある。

[鳥居泰男]

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化学辞典 第2版の解説

通称,ミョウバンとよばれるM M(SO4)2・12H2Oのうちで,一般に M = Feのものをいうが (M = K,NH4,Rb,Cs,TIなど),さらに M = Kのもの(鉄カリウムミョウバン[CAS 13464-29-1])のみををさすこともある.市場では,M = NH4のもの(鉄アンモニウムミョウバン[CAS 7783-83-7])のほうが多く使われているため,これを鉄ミョウバンということもある.結晶は,いずれも [Fe(H2O)6]3 による淡紫色を帯びる.媒染剤として用いられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典内の鉄ミョウバンの言及

【擬ミョウバン(擬明礬)】より

…しかし実際には結晶水が24のものが存在するかどうかは明確でない。たとえば鉄ミョウバン(halotrichite)FeIISO4・Al2(SO4)3・22H2Oは,硫酸を含む熱水溶液が火成岩に作用して生ずる単斜晶系の鉱物である。また苦土ミョウバン(pickeringite)MgSO4・Al2(SO4)3・22H2Oは単斜晶系の鉱物で,やはり岩石が硫酸に侵された場合にみられる。…

【ミョウバン(明礬)】より

…MI=NH4のときがアンモニウムミョウバン(古くはアンモニアミョウバンといった)などである。これに対しMI=Kで,MIIIのAlをCr,Feなどで置き換えたものはクロムミョウバン,鉄ミョウバンのように呼ぶ。さらにMIのKを他の陽イオンで置き換えたもの,たとえばMI=NH4,MIII=Feの場合はアンモニウム鉄ミョウバンのようにいう。…

※「鉄ミョウバン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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