長靴をはいた猫(読み)ナガグツヲハイタネコ

デジタル大辞泉 「長靴をはいた猫」の意味・読み・例文・類語

ながぐつをはいたねこ【長靴をはいた猫】

原題、〈フランスLe Chat botté》フランスの昔話。貧しい粉ひき職人の三男坊が、猫の知恵により王の娘婿となる。ペローの「童話集」に収められている。
《原題、〈ドイツDer gestiefelte Katerティークによる風刺劇。1844年、ベルリン初演

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改訂新版 世界大百科事典 「長靴をはいた猫」の意味・わかりやすい解説

長靴をはいた猫 (ながぐつをはいたねこ)

フランスのシャルル・ペローが1697年に出版した《昔々の物語ならびに教訓》に再話として収めた昔話。遺産として猫しかもらえなかったある三男坊に,猫がカラバ侯爵という名をつけて巧みに王に推挙するいきさつを物語る。王が王女とともに川辺を散歩していると,猫はカラバ侯爵が溺れかけていると叫んで王の家来にこの男を救助させ,王には侯爵の衣類が盗まれたと偽って,りっぱな服をせしめる。王が旅に出ると,畑の農夫たちに,自分らはカラバ侯爵の畑で働いていると言わせる。王の先回りをして人食い鬼の城に着くと,猫は鬼をだまして鼠に変身させて食べてしまう。王が城に到着すると,カラバ侯爵の城であると言って王を信用させ,侯爵と王女をついに結婚させる。この話の最古の記録は,16世紀イタリアのストラパローラ,17世紀イタリアのバジーレのおとぎ話集にみられる。ペローはこれらの作品から採り入れたものと思われる。猫に長靴をはかせたのと,猫が城の人食い鬼をだまして鼠に変身させて食べるところはペローが加えたものと考えられている。現在ではこの話は全ヨーロッパで知られているが,いずれもペローの作品によるものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「長靴をはいた猫」の意味・わかりやすい解説

長靴をはいた猫
ながぐつをはいたねこ
Le Chat botté

散文で書かれたペロー童話の一編。親の遺産として小猫一匹しかもらえなかった粉ひきの三男坊は、わが身の不運を嘆いた。しかし、この小猫は非常に賢く、「やぶの中に入れるような長靴を一足」つくってやると、これを履いて大活躍、ついに、この若者を王女の婿にしてしまう話。巻末の教訓には、「ふつう若者にとって、/世渡りの術とかけひき上手が/もらった財産より役に立つ」「粉ひきの息子が、これほど早く、/王女さまの心をとらえ、/恋わずらいの目でみつめられたからには、/衣裳(いしょう)や顔かたちや若さが、/恋心を吹きこむのに、/無関係な手段ではない証拠」(新倉朗子訳)と記されている。

[窪田般彌]

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デジタル大辞泉プラス 「長靴をはいた猫」の解説

長靴をはいた猫

米国の作家エド・マクベインのミステリー(1987)。原題《Puss In Boots》。「ホープ弁護士」シリーズ。

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世界大百科事典(旧版)内の長靴をはいた猫の言及

【ストラパローラ】より

…ボッカッチョの《デカメロン》と同じ枠物語の体裁をとり,13人の女と多数の男たちが13夜73話を語りつぐ。たとえば,ペローの《長靴をはいた猫》の原型は第11夜第1話。聖職者に対する冒瀆の理由から,反宗教改革の時代の1624年には禁書目録にも加えられた。…

【ティーク】より

…ドイツ初期ロマン派の代表的作家。ロマン派の中ではあらゆる文学ジャンルに熟達した最も多作な作家。ベルリンに生まれ,若くして文筆活動に従事したが,合理主義・啓蒙主義の時代精神と自由な内面的・芸術的精神の相克に苦しむ。大学時代,同郷・同窓の友で夭折した初期ロマン派の詩人ワッケンローダーWilhelm Heinrich Wackenroder(1773‐98)と共にバンベルク,ニュルンベルクに遊び,中世的な雰囲気と中世キリスト教芸術に魅せられる。…

【ペロー】より

…彼はまた17世紀末から著しい妖精物語の流行に刺激されて,民間伝承に素材を求め,97年に《昔々の物語》あるいは《お伽噺》と呼ばれる童話集を書いた。《眠れる森の美女》《赤頭巾》《青ひげ》《長靴をはいた猫》《妖精》《シンデレラ》《まき毛のリケ》《親指小僧》の8編を収める。これ以前に書かれた3編の韻文の物語,《サリュス侯爵夫人あるいはグリゼリディスの忍耐》《願いごと》《ロバの皮》を加えて,いわゆるペロー童話集として,後世に伝わった。…

【レーゼドラマ】より

…またルネサンス期の人文学者たちは,討論にしばしば劇的形式を使っていた。疾風怒濤期やロマン派の作家にも(狭義の)劇形式を無視した作品が多いが,L.ティークが文壇を風刺する目的で書いた《長靴をはいた猫》が,のちに劇中劇形式という試みのなかで舞台から注目されたという例もある。日本でも北村透谷の《蓬萊曲(ほうらいきよく)》などは代表的なレーゼドラマであろう。…

【ロマン派演劇】より

…国民性の重視また中世への回帰的影響から生まれた年代記的な史劇や宗教劇,詩の聖典(カノン)といわれた童話に材をとる童話劇,夢幻劇,また多少迷信的ともいえる宿命を導入した運命悲劇(Z.ウェルナー《二月二十四日》)など,ロマン派演劇には多くのジャンルが生まれたが,舞台的な成功を収めたのは運命悲劇のみであった。実際,風刺劇,ナンセンス劇などは,もともと上演用より作者の知的な立場を示すために書かれており,L.ティークの有名な劇中劇《長靴をはいた猫》なども,後世になってから舞台上演が注目されたものである。また,A.G.vonプラーテンの《不吉なフォーク》(1826)は運命悲劇のパロディとして知られている。…

※「長靴をはいた猫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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