間性(読み)かんせい(英語表記)intersex

翻訳|intersex

精選版 日本国語大辞典 「間性」の意味・読み・例文・類語

かん‐せい【間性】

〘名〙 雌雄異体または異株の生物の一個体に、雌雄の両形質が混合して現われること。また、その性質。動物ではマイマイガ、植物ではスイバなどにみられる。体内細胞の遺伝子構成が性に関して異なるので雌雄モザイクと区別される。

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デジタル大辞泉 「間性」の意味・読み・例文・類語

かん‐せい【間性】

雌雄異体の種で、雌と雄との中間の形質をもつ異常個体。性染色体異常などによって起こるが、体細胞遺伝子構成は正常で、体のどの部分の細胞も同一型の遺伝子をもつ点が雌雄同体雌雄モザイクとは異なる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「間性」の意味・わかりやすい解説

間性
かんせい
intersex

雌雄の区別のある生物で、その生殖器官や第二次性徴が、雄でもなく雌でもなくその両方が入り混じった中間型となっている個体またはその性質をいう。多くは生殖能力がないか、どちらか一方の生殖細胞のみをつくる。間性は体のすべての部分の細胞が同一の遺伝子型をもち、最初どちらか一方の性として発生した個体が、途中でホルモンなどの異常により、他の性に転換し、その途中の両方の性の中間でとどまることによって生じると考えられる。正常に雄と雌の両方の生殖器官や生殖細胞ができる雌雄同体hermaphroditeや、発生の途中で染色体の一部の欠失や組換え、突然変異などによって、体の一部が雄型で、他の一部が雌型になる雌雄モザイクsex mosaic, gynandromorphとも区別される。間性は雌雄性の程度によって、雌性間性、雄性間性、真正間性などに分けられる。

 間性はR・B・ゴルトシュミットが、森林の害虫であるマイマイガLymantria disparの日本種とヨーロッパ種の間でかけ合わせを行うと、子孫の間に一定の法則に基づいた種々の程度の間性をみいだした(1915)のが最初で、日本種とヨーロッパ種とで雌雄を決める因子の強さに差があるために、異なる種族のかけ合わせでは間性ができると説明された。ショウジョウバエでも間性ができ、この場合は性染色体の数と常染色体の組数との比によって性が決定され、その比が2:2のときは正常雌、1:2のときは正常雄、2:3のときは間性となる。また、ヤギブタなどの家畜にもある。

 ヒトの間性は半陰陽とよばれ、性染色体異常(XXY。不活性化したX染色体の増加)により精巣が発達しないクラインフェルター症候群や同じく性染色体異常(XO。性染色体がX染色体1本のみ)で卵巣が発達しないターナー症候群、精巣と卵巣が存在する真性半陰陽など性腺(せいせん)の分化異常によるものが多い。

[黒田行昭]

『田中義麿著『基礎遺伝学』(1951・裳華房)』『駒井卓著『人類の遺伝学』(1966・培風館)』『市川衛著『基礎発生学概論』新版(1968・裳華房)』『R・H・タマリン著、木村資生監訳、福田一郎他訳『遺伝学』上(1988・培風館)』

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改訂新版 世界大百科事典 「間性」の意味・わかりやすい解説

間性 (かんせい)
intersex

中性ともいう。本来は雌雄異体もしくは雌雄異株の生物個体において何らかの原因によって,雌形質と雄形質が混在する現象。間性は体を構成するすべての細胞の遺伝子組成が一様である点で雌雄モザイクとは異なる。雌形質の強いものを雌間性,雄形質の強いものを雄間性というが,両形質が混在する程度はいろいろである。間性が発生する原因として,性決定因子の平衡説や量的学説などが提唱されている。ショウジョウバエでは生殖細胞のX染色体が減数分裂に際して均等に分かれない結果,子に常染色体の組の数と性染色体の数のいろいろな組合せをもつ個体が生じることがある。ブリッジズC.B.Bridgesは,この現象を,X染色体に雄化遺伝子が,常染色体に雌化遺伝子があり,雌雄はX染色体の数と常染色体の組の数の比(性指数)によって決まると考え,この値が正常の雄と雌の中間のとき間性になると説明した(平衡説)。また,マイマイガは日本産のものとヨーロッパ産のものを交配すると間性を生じる。これをゴルトシュミットR.B.Goldschmidtは,雌性決定因子が卵の細胞質中に,雄性決定因子がZ染色体上に(雄の性染色体はZZで雌はZWである)存在すると仮定し,これらの因子の強さが品種間でまたは発生時期で異なり,発生途中で性転換がおこり間性が生ずると説明した(量的学説)。一般に後から発生する器官ほど性転換の影響をうける度合が大きく,転換から後の発生期間の長い個体ほど強い間性になるが,これを間性の時の法則という。甲殻類では,造雄腺が発見され,この作用が発生の途中で抑えられると間性になることがわかった。脊椎動物では,間性とホルモンとの関係が明らかになり,メダカ稚魚やオタマジャクシの雌雄に反対の性ホルモンを与えて実験的に間性を誘起することができる。哺乳類の性分化におけるH-Y抗原の役割が明らかになり,間性についても分子レベルで説明できるようになってきた。
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百科事典マイペディア 「間性」の意味・わかりやすい解説

間性【かんせい】

中性とも。元来雌雄の明らかな動植物で,中間的な性形質が現れる現象。1次,2次,3次性徴のいずれにも起こり,その程度もさまざま。比較的雄に近いものを雄間性,雌に似るものを雌間性という。原因としては,性決定因子の平衡説や量的学説が提唱されている。そのほか,甲殻類では造雄腺の作用が発生の途中で抑えられると間性になることがわかっており,脊椎動物でも間性とホルモンの関係が明らかになっている。またヒトでは性染色体異常による間性も知られている。
→関連項目雌雄同体半陰陽フリーマーチン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「間性」の意味・わかりやすい解説

間性
かんせい
intersex

生物本来の性のあり方として,雌雄異体であるはずのものが,同一個体に雌雄の両形質が混って発現したもの。その程度はいろいろで,ほとんど雌の形質にかたよったものから雄の形質にかたよったものまでが存在する。本来の両性動物とはまったく意味が異なる。

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世界大百科事典(旧版)内の間性の言及

【フェミニティテスト】より

…男女の性は,受精時に決定され,それぞれの性染色体構成によって,性腺原基が分化し,男性では睾丸(精巣),女性では卵巣となり,さらに内性器,外性器が分化する。このような性決定,性分化の過程で異常が生じると,いろいろな間性inter sex(半陰陽ともいう)が生じてくる。ところが社会的な性の判定は,出生時の外性器の外見で行われるため,男性半陰陽の人が女性として育てられることがある。…

【フェミニティテスト】より

…男女の性は,受精時に決定され,それぞれの性染色体構成によって,性腺原基が分化し,男性では睾丸(精巣),女性では卵巣となり,さらに内性器,外性器が分化する。このような性決定,性分化の過程で異常が生じると,いろいろな間性inter sex(半陰陽ともいう)が生じてくる。ところが社会的な性の判定は,出生時の外性器の外見で行われるため,男性半陰陽の人が女性として育てられることがある。…

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