閻魔・琰魔・焔魔(読み)えんま

精選版 日本国語大辞典 「閻魔・琰魔・焔魔」の意味・読み・例文・類語

えんま【閻魔・琰魔・焔魔】

[1] (Yama の音訳。手綱・抑制・禁止などの意。遮止(しゃし)・静息など種々に訳し、また、死者の霊を捕縛する「縛」とも、平等に罪福を判定する意の「平等」とも訳す。また、古代インド神話では、兄妹双生児であるところから「双」とも。また、梵語 rāja (王の意)を付した音訳語、閻魔羅社・琰摩邏闍などを略して閻羅・琰羅などともする) 仏語。死者の霊魂を支配し、生前の行ないを審判して、それにより賞罰を与えるという地獄の王。閻魔王。閻魔大王。閻魔羅。閻羅。閻羅王。
※霊異記(810‐824)下「死して琰魔の国に至る」
[2] 〘名〙
① (「借る時の地蔵顔(じぞうがお)、なす時の閻魔顔」ということわざから) 借金のある人。
※雑俳・柳筥(1783‐86)二「借りたのをなすが閻魔(エンマ)はきらい也」
② (閻魔王の像が恐ろしい顔をしているところから) 借金取り、掛け取りなどの類。
※雑俳・軽口頓作(1709)「のうのうのう・ゑんまいなすにあせかいた」
③ 明治期、雇い人をあっせんする口入所の帳場で、登録を紹介する役目の者。
※風俗画報‐二二〇号(1900)新葭町「先づ入口近くに、湯屋の番台の如き台の上にゑんまとて帳付をなす男坐り居り、是は雇はんと云ひ来りし方を帳面に記入れ置き」
[語誌](1)(一)は、古代インド神話では、夜摩 Yama 神で、みずから冥界を見いだし、死者の王となった。天上楽土とされたが、後に下界に転じ、死者の生前の行為を審判する神とされた。これが仏教にはいり、一は六欲天の一つ、夜摩天となり、他は冥界の閻魔王となったもので、のち、中国にはいって、道教などと混じて、五官王、八王、十王などの説を生じ、特に裁判官である十王の一つとされた。住所は餓鬼界とするものなど、幾つかの説があるが、後に地獄界とするようになったもので、赤血色の衣をまとい、冠をかむり、目を怒らせ、手に罪人を縛る縄を持つ姿が、閻魔の一般的イメージである。
(2)「閻摩・琰摩・閻羅(えんら)・閻摩羅(えんまら)」など、種々の表記・呼び方のあることは、「一切経音義(玄応音義)」等の仏書から確認でき、「今昔‐六・三九」の表題に「閻魔」と記されながら、本文では「閻羅」となっているように、一つの作品、一つの話の中で併用されていることもある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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