精選版 日本国語大辞典 「陰・蔭・翳」の意味・読み・例文・類語
かげ【陰・蔭・翳】
〘名〙 (「かげ(影)」と同語源)
① 物の下や後になって、光や風にさらされない空間。
② 物のうしろ。後方。
※徒然草(1331頃)一七一「よそを見渡して、人の袖のかげ、膝の下まで目をくばるまに」
③ 人目にかからない、隠れた場所。表立たない所。また、その人の居合わせない場所。
※更級日記(1059頃)「父(てて)はただ我をおとなにしすゑて、我は世にも出で交らはず、かげに隠れたらむやうにてゐたるを見るも、頼もしげなく」
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「仍(よっ)て蔭(カゲ)ではめの字を添て、三馬めがと人皆鄙(いや)しむ」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「今迄どほり、をさなく、愛度気(あどけ)なく待遇(あしら)はうと、影では思ふが」
④ 人間関係や世間の及ぼす被害からの庇護。また、助力したり守ってくれたりする人。めぐみ。おかげ。
※古今(905‐914)東歌・一〇九五「つくばねのこのもかのもに影はあれど君がみかげにます影はなし〈ひたちうた〉」
⑤ 物事の裏面。「犯罪のかげに女あり」
⑥ (翳) 何か暗さを感じさせるような、人の性格や雰囲気。また、人の心や一生に立ちあらわれる、暗い、重苦しい感覚など。
※黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉五「最後の句は、敬二の心に暗い翳(カゲ)を作った」
[二] 特殊な対象に限った用法。
① 内密に出す祝儀などの心づけ。
③ 歌舞伎で、付(つけ)(一)⑦のこと。
※洒落本・一向不通替善運(1788)「半七は木綿太織をのろま色に染て、紋所はさくら草をかげにつけ」
⑤ まだ正式に舞台に立たない少年の歌舞伎俳優。
※評判記・難波の㒵は伊勢の白粉(1683頃)二「あの上村千之介が未(いまだ)かげなる時の事」
⑥ 「かげまつり(陰祭)」の略。
⑦ (その期間中は人前に出ないようにするところから) 月経をいう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
かげ・る【陰・蔭・翳】
〘自ラ五(四)〙
① 陰になる。光が暗くなる。くもる。
※参天台五台山記(1072‐73)七「十八日辛酉。天翳。三蔵来坐」
② 日が傾く。日が暮れる。
※改正増補和英語林集成(1886)「ヒガ kageru(カゲル)」
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