隠首括出(読み)おんしゅかっしゅつ

精選版 日本国語大辞典 「隠首括出」の意味・読み・例文・類語

おんしゅ‐かっしゅつ ‥クヮッシュツ【隠首括出】

〘名〙 令制で、戸籍計帳に記載されていない者が自首する隠首と、その者を官司が摘発する括出。奈良時代以来、公民浮浪逃亡に悩まされたため、これを励行し、租税確保に努め、人口を増加すれば、国司郡司功績とした。また、京畿内は地方と比べて課役が軽く、畿外から浮浪人が流入して隠首や括出と称して畿内の戸籍に編入されようとするので、平安初期、畿内では禁止したことがあった。
三代格‐一七・天長五年(828)五月二九日「勅符偁、隠首括出、禁京畿者」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「隠首括出」の意味・わかりやすい解説

隠首・括出 (おんしゅかっしゅつ)

日本古代の律令用語。名前が戸籍計帳に登録もれになっている者が,みずから名のり出ることを隠首といい,官司の手によって摘発されることを括出という。養老令(718年完成,757年より施行)によれば,隠首や括出による籍帳上の戸口増加は,逃走中の者がそれを悔いて帰還してくる走還による人口増とともに,国司・郡司の功績とされている。大宝令(701年完成)の規定は不明であるが,その施行時期にあたる726年(神亀3)の計帳には〈括首〉と記された実例がある。なお,後年の《延喜主計式》でも〈括首〉とある。もともと課役負担者を確保することを目的とした制度であるが,9世紀に入ると,地方の民衆が課役の軽い京畿内に流入するための方便として隠首を利用しはじめた。これを防ごうとして京畿内における隠首を禁じ,括出をとりやめたところ,今度は浮浪人が増大したという。隠首の禁止とその解禁をくり返した状況が,当時の太政官符の中に見いだされる。
浮浪・逃亡
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android