雁音・雁・雁金(読み)かりがね

精選版 日本国語大辞典 「雁音・雁・雁金」の意味・読み・例文・類語

かり‐が‐ね【雁音・雁・雁金】

[1] 〘名〙
① 雁の鳴き声。雁(がん)の鳴く音(ね)。《季・秋》
万葉(8C後)八・一五一三「今朝の朝け雁之鳴(かりがね)聞きつ春日山もみちにけらし吾が心いたし」
② (転じて) 鳥「がん(雁)」の異名。《季・秋》
※万葉(8C後)一五・三六八七「あしひきの山飛びこゆる可里我禰(カリガネ)は都に行かば妹にあひて来ね」
※新古今(1205)春上・六〇「古郷に帰る雁がねさ夜ふけて雲路にまよふ声きこゆ也〈よみ人しらず〉」
③ (雁金) カモ科の水鳥。全長約六〇センチメートルの小形のガン。マガンに酷似するが小さく、額の白色部が広い。ユーラシア大陸北部で繁殖、日本には冬まれに渡来する。こかりがね。きんめ。〔本朝食鑑(1697)〕
④ 雁を図案化した紋章。雁音、結び雁音、飛び雁音、三つ盛雁音などがある。また、それを紋所としていたところから、柴田勝家の異称。
⑤ =かり(雁)
随筆・卯花園漫録(1809)一「蚊蟵画雁、蚊蟵に雁金を染、或は紙にて切て付る事、その由来を知る人なし」
⑥ 江戸時代に使われたお茶の一種。煎茶の銘か。
※洒落本・讚極史(1789‐1801)「喜撰の新ときては、煎茶家のひねる所さ。折鷹・厂金(カリガネ)もよいが、喜撰にゃ及ばねへ」
[2] 清元。河竹黙阿彌作詞。二世清元梅吉作曲。本名題色増栬夕映(いろまさるもみじのゆうばえ)」。明治一四年(一八八一)東京新富座上演の「島鵆月白浪(しまちどりつきのしらなみ)」で、望月輝(あきら)とその妾弁天お照との恋愛の場面に効果音楽風に使った浄瑠璃。端唄流行の時代を反映して、全体に端唄的情緒が強い。
[語誌]→「かり(雁)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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