雑談集(読み)ゾウタンシュウ

デジタル大辞泉 「雑談集」の意味・読み・例文・類語

ぞうたんしゅう〔ザフタンシフ〕【雑談集】

鎌倉時代仏教説話集。10巻。無住一円著。嘉元3年(1305)成立。「沙石集」より滑稽譚が多いが、教理性が強い。
俳文集。2巻。宝井其角編。元禄4年(1691)成立、翌年刊。上巻俳論などの文章を、下巻連句中心収録

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精選版 日本国語大辞典 「雑談集」の意味・読み・例文・類語

ぞうたんしゅう ザフタンシフ【雑談集】

[一] 鎌倉後期の仏教説話集。一〇巻。無住著。嘉元二年(一三〇四)起筆、同三年成立。寛永二一年(一六四四)刊。発心遁世譚・霊験譚・寓話などをまじえながら、仏教の教理を説いたもの。随想自伝などの部分が多く、「沙石集」「聖財集」とあわせて無住を探る上で重要。説話集の中でもっとも自照性がつよい作品の一つ。
[二] 俳文集。二冊。宝井其角撰。元祿四年(一六九一)成立。同五年刊。上巻は文章を主とし、下巻は連句を主として収める。文章は三十数編で、その中の俳論にみるべきものがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「雑談集」の意味・わかりやすい解説

雑談集 (ぞうたんしゅう)

仏教説話集。無住道暁(むじゆうどうぎよう)編。10巻。1304年(嘉元2)に起筆し,翌年に脱稿,その後も加筆された。《沙石集(しやせきしゆう)》《聖財集(しようざいしゆう)》《妻鏡(つまかがみ)》に続く無住最晩年の作で,表記は漢字片仮名交じり文。同法の僧の求めに応じて,編者の日常の法談,雑話をまとめたものという。雑纂的で,広く仏教の事理を説き,証話を引いて仏・法・僧の霊験に言及している。一宗に偏せず,ときに神明,俗事にもわたっていることは,編者の仏教理解の姿勢を反映したもの。先出の《沙石集》などと共通記事が散見し,また随所に述懐的記事が目だつのも,晩年の作たるにふさわしい。《沙石集》に比べて流布性に乏しく,後代文学への影響は希薄である。
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百科事典マイペディア 「雑談集」の意味・わかりやすい解説

雑談集【ぞうたんしゅう】

鎌倉後期の説話集。編者は無住。1305年,晩年80歳の時成立。10巻。〈在家愚俗〉に向けた《沙石集》に比して,若年の僧のために記したといい,回想自伝的な記事が多い。集中の和歌70余首には,自詠の稚拙というべきものが多い。無住の〈狂言綺語観〉を知る上で貴重である。
→関連項目ささやき竹雑談

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雑談集」の意味・わかりやすい解説

雑談集
ぞうたんしゅう

鎌倉時代の仏教説話集。10巻。無住(むじゅう)の著。1305年(嘉元3)成立。同じ著者の手になる『沙石集(しゃせきしゅう)』と同様に、説話を比喩(ひゆ)・例証として、読者を正しい仏教理解へと導こうとするもの。硬質の教理解説的な記述が多いが、各論の断片を順不同に並べた趣(おもむき)があり、体系的ではない。他の説話集と類似の説話も少なくないが、著者の見聞に基づく同時代の説話には捨てがたい味わいのあるものも多い。説話集としては珍しく著者自身を話題にするところがあり、説話集編者の内面をのぞかせている。

[小島孝之]

『山田昭全・三木紀人校注『中世の文学3 雑談集』(1973・三弥井書店)』

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