雲居・雲井(読み)くもい

精選版 日本国語大辞典 「雲居・雲井」の意味・読み・例文・類語

くも‐い ‥ゐ【雲居・雲井】

〘名〙 (「居」はすわるの意。「井」は当て字)
① 雲のある所。空の高い所。大空。天上
古今(905‐914)恋二・五八五「人を思ふ心はかりにあらねどもくもゐにのみもなきわたるかな〈清原深養父〉」
※読本・雨月物語(1776)夢応の鯉魚「杖に扶られて門を出づれば、病もやや忘れたるやうにて籠の鳥の雲井にかへるここちす」
② 雲。
※古事記(712)中・歌謡「はしけやし 我家(わぎへ)の方よ 久毛韋(クモヰ)立ち来も」
③ 中心となるべき所からはるかに隔たった場所。遠く、または高く離れた所。
万葉(8C後)一・五二「名ぐはしき 吉野の山は 影面(かげとも)の 大き御門ゆ 雲居にそ 遠くありける」
皇居宮中。また、天皇、皇室をもいう。
※大和(947‐957頃)一〇六「雲井にてよをふるころは五月雨あめのしたにぞ生けるかひなき」
⑤ 皇居のある所。すなわち、都。
浄瑠璃・頼光跡目論(1661‐73頃)二「潔く討死し、屍は野外に埋み名をばくもゐにしらせんと」
⑥ きざみタバコの一銘柄。専売制度以前にあったもので禁裏御用となったところからの名という。常陸国久慈郡太田(茨城県常陸太田市)付近の産。香りは高く、味は軽い
洒落本・文選臥坐(1790)東北の雲談「浪花より今度は雲井(クモゐ)になされ又薫りがちかふたものじゃ」
香木の名、分類真南蛮(まなばん)香味は苦甘。六十一種名香の一つ。香りは重々しく品位がある。〔名香合(1502)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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