雲母(読み)うんも

精選版 日本国語大辞典 「雲母」の意味・読み・例文・類語

うん‐も【雲母】

[1] 〘名〙 アルミニウムカリウムナトリウムなどを含むケイ酸塩鉱物花崗岩、結晶片岩、片麻岩などの造岩鉱物として重要。単斜晶系に属し、白雲母黒雲母に大別される。六角板状の結晶で、平行に薄くはがれやすく、薄片は弾性がある。電気絶縁、耐熱材料として用いる。また、漢方薬としても用いられた。うんぼ。きら。きららマイカ
※詩聖堂詩集‐三編(1838)一〇「雲母嵌窓供雪、水晶並鏡便書、硯田必竟無豊倹、米価従教珠玉如」
[2] 俳句雑誌。愛知県家武村(西尾市)で「キラヽ」として発刊されたものを前身とする。大正六年(一九一七)、飯田蛇笏が主宰となって「キラヽ」から「雲母」に改称。同一四年以後、編集発行所は一時期を除き、山梨に移った。重厚で格調の高い句風を特色とする。同人、西島麦南、高橋淡路女ほか。昭和三七年(一九六二)一〇月、蛇笏の死去により、飯田龍太が主宰を継承。平成四年(一九九二)八月号、通巻九〇〇号にて終刊。

きらら【雲母】

〘名〙 (きらめくところから)
① 雲母(うんも)をいう。きら。きらいし。〔十巻本和名抄(934頃)〕
② 昆虫「しみ(衣魚)」の異名。
雑草園山口青邨〉(1934)昭和四年「ひもとける金槐集のきららかな」
中国に産するという美しい石の名。玫瑰(まいかい)

うん‐ぼ【雲母】

〘名〙 =うんも(雲母)(一)〔伊京集(室町)〕
[補注](1)「日用月用能毒之捷径‐五三」に「雲母〈略〉白芷と同等分に粉にして、一二服ふのりを刻みまぜて、かえりたる湯にかきたてて服すれば、難産のとき立処にうむなり。赤白の痢久しくいえざるに虚労したるに」とある。
(2)「色葉字類抄」には「雲母 ウンホ 屏風名」とある。

きら【雲母】

〘名〙 =きらら(雲母)
高野山文書‐寛永元年(1624)一一月一四日・天野社遷宮入用注文案「荘厳之入目〈略〉一壱升六合八勺 きらの代」

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デジタル大辞泉 「雲母」の意味・読み・例文・類語

うん‐も【雲母】

六角板状の結晶をなす珪酸塩けいさんえん鉱物花崗岩かこうがんなどに含まれ、薄くはがれやすい。弾性に富み、耐火性が強く、真珠光沢がある。白雲母黒雲母など数種ある。マイカ。きらら。うんぼ。
[補説]書名別項。→雲母

うんも【雲母】[書名]

俳誌。大正6年(1917)、飯田蛇笏が俳誌「キラヽ」(大正3年創刊)の主宰になると同時に改称して発刊。平成4年(1992)廃刊。

きらら【雲母】

雲母うんものこと。きら。

うん‐ぼ【雲母】

うんも(雲母)

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改訂新版 世界大百科事典 「雲母」の意味・わかりやすい解説

雲母 (うんも)

うんぼ,マイカmicaともいい,俗に“きらら”ともいう。層状のケイ酸塩鉱物のうち主要なもので,平らに薄くはがすことのできる鉱物。重要な造岩鉱物の一つであるほか,電気製品に絶縁材料として用いられた。雲母の鉱物学的定義および諸性質はその層状につながった原子配列によるところが多い。雲母の結晶構造の基本単位は,Si,Al,Fe3⁺などを含む酸素四面体が二次元的につながった四面体シート2枚にはさまれた,八面体配位をなす陽イオンの酸素八面体が二次元的につながった1枚のシートよりなる。この基本単位層の間に水和していないK,Naなどの層間陽イオンをはさみながら積み重ねたものが雲母の基本構造であり,約10Åの厚さをもつ。四面体陽イオンは(Si,Al)2O5の組成をもつ。八面体陽イオンにはFe2⁺,Mg,Mn,Li,およびAlと時に少量のFe3⁺,Cr,Tiなどを含む。化学組成の変化に応じて色,比重,光学的性質は変化する。かならずしも連続的な固溶体が存在するとは限らない。酸素を10としたときの化学式で八面体陽イオンの数が2.5~3のものを三・八面体雲母,2~2.5のものを二・八面体雲母という。層間にCaなど2価の陽イオンの入ったものはゼイ(脆)雲母と呼ばれている。

(1)二・八面体雲母

 白雲母muscovite KAl2(Si3Al)O10(OH)2

 ソーダ雲母paragonite(ナトリウム雲母,パラゴナイトとも呼ぶ)NaAl2(Si3Al)O10(OH)2(2)三・八面体雲母

 金雲母phlogopite KMg3(Si3Al)O10(OH)2

 黒雲母biotite K(Fe,Mg)3(Si3Al)O10(OH)2

 アナイトannite KFe3(Si3Al)O10(OH)2

 イーストン石eastonite KMg2.5Al0.5(Si2.5Al1.5)O10(OH)2

 シデロフィライトsiderophyllite KFe2.5Al0.5(Si2.5Al1.5)O10(OH)2

 鱗雲母lepidolite(紅雲母,リシア雲母レピドライトとも呼ぶ)KLi2AlSi4O10F2からK(Li,Al)2.5(Si,Al)(OH,F)2

雲母は平板状にわれやすく,六角板状に近い外形を示すが,他の結晶面はあまり発達しない。また双晶していることが多い。10Åの厚さをもつ単位層が周期的に積み重なった構造は単斜晶系の対称をもつ。しかし積み重なり方の違いにより結晶系,空間群,構造の異なるポリタイプを生ずる。2層のポリタイプには単斜晶系のもの二つ(2M1,2M2)と斜方晶系のもの(2O)がある。3層のものでは三方晶系(3T)が普通であるが,時に三斜晶系のものを産する。31層のものまで知られている。白雲母は肉眼的に白色で,顕微鏡で見ると無色透明,比重は2.8~3.0である。ペグマタイトの中には数十cmに達する大きい結晶を産するものもある。黒雲母は肉眼的には黒色で,顕微鏡で見ると一般に褐色である。花コウ岩,雲母片岩中の黒い鉱物は多くの場合,黒雲母である。金雲母は肉眼的には黄褐色,顕微鏡では無色である。比重は2.8~3.4である。鱗雲母はLiを含み,肉眼的には白~淡紅色であり,主にペグマタイトに産する。ソーダ雲母は黄みのある灰色で顕微鏡下では無色,まれに変成岩の中に産す。工業用材料にフッ素を含んだ雲母が合成されている。
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化学辞典 第2版 「雲母」の解説

雲母
ウンモ
mica

X2Y4~6[(Si,Al)8O20](OH,F)4.X = K,Naのものを脆雲母(brittle mica),X = Caのものを普通雲母(common mica)という.Y = Al,Fe,Li,MgでYが4のものをジオクタヘドラル型雲母,6のものをトリオクタヘドラル型雲母と大別する.フィロケイ酸塩鉱物に属し,SiO4の四面体の層状構造の間にほかのイオンがはさまれている.火成岩変成岩たい積岩中に広く分布する.合成も工業的な規模で行われており,たとえば,フッ素金雲母(fluorphlogopite)は,K2SiF6・6MgO・Al2O3・5SiO2の成分を自己抵抗加熱により1000~1300 ℃ に熱して大結晶を育成できる.これは天然産雲母に比べて,耐熱性にすぐれている.また,結晶構造のうえから層の積重なりの違いにより,1M型(一層),2M型,2O型(二層),3T型(三層),6H型(六層)などの多形が知られている.単斜晶系板状結晶.密度2.75~3.2 g cm-3.硬度2.5~4.n1.525~1.696.白雲母,金雲母,べに雲母などは,耐熱絶縁材料として広く利用されている.

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百科事典マイペディア 「雲母」の意味・わかりやすい解説

雲母【うんも】

マイカ,きららとも。弾性に富んだ六角板状のアルミニウムケイ酸塩鉱物で,最も普通の造岩鉱物。単斜晶系または斜方晶系。Al,Kのほか,ときにMg,Fe,Li,Na,Mn,Fなどを含み,化学成分の差により白雲母族(白雲母,絹雲母,チンワルド雲母,リシア雲母,クロム白雲母など)と黒雲母族(黒雲母,金雲母,鉄雲母)の2群に分けられる。構造的にはフィロ型のケイ酸塩鉱物で,へき開は最も完全で底面に平行に紙より薄くはがすことができ,へき開面には真珠光沢,ガラス光沢があり特有な打像が出る。電気絶縁体として利用。工業用材料にフッ素を含んだ雲母が合成されている。
→関連項目アイコノスコープ人工鉱物トースター

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雲母」の意味・わかりやすい解説

雲母
うんも
mica

X2Y4~6Z8O20(OH,F)4 の化学式を有するフィロケイ酸塩鉱物。マイカともいう。ただし,X=カリウム,ナトリウム,カルシウム,12配位,Y=鉄,マグネシウム,アルミニウム,チタン,リチウム,6配位,Z=ケイ素,アルミニウム,4配位。ポリタイプがあり,多くは単斜完面像ないし半面像で,他に斜方異極半面像,三方対掌半面像,六方対掌半面像がある。結晶構造が二次元的な平面を重ねたような構成になっているので,容易にその面に平行な薄片にはがすことができる。化学組成や陽イオンの配位の仕方によって次のような鉱物種に分類されている。白雲母海緑石金雲母黒雲母チンワルド雲母リシア雲母。白雲母-パラゴナイト,金雲母-黒雲母,リシア雲母-白雲母などの系には固溶体が形成される。きわめて普遍的に産する造岩鉱物で,火成岩,変成岩,堆積岩の一部,各種熱水鉱床に伴う変質岩中などに産する。低い導電性と劈開性のため電気的絶縁や熱的絶縁物として使われたり,壁紙や潤滑剤の材料として使われる。

雲母
うんも

俳句雑誌。 1918年1月創刊。主宰者は飯田蛇笏 (だこつ) で,蛇笏が雑詠の選を担当していた『キラゝ』 (1915創刊) がその前身。季題,定型の伝統を守りつつ,主観の独創を目指し,西島麦南,中川宗淵らの人材を育てた。 62年に蛇笏が没したあとは4男飯田龍太に継承されたが,92年 900号をもって終刊となった。

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普及版 字通 「雲母」の読み・字形・画数・意味

【雲母】うんも・うんぼ

きらら。唐・李商隠〔常娥〕詩 雲母の風、燭影深し 長河漸くちて、曉星沈む

字通「雲」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の雲母の言及

【雲母】より

…重要な造岩鉱物の一つであるほか,電気製品に絶縁材料として用いられた。雲母の鉱物学的定義および諸性質はその層状につながった原子配列によるところが多い。雲母の結晶構造の基本単位は,Si,Al,Fe3+などを含む酸素四面体が二次元的につながった四面体シート2枚にはさまれた,八面体配位をなす陽イオンの酸素八面体が二次元的につながった1枚のシートよりなる。…

【誘電材料】より

…油もεが小さい欠点があるが,高分子膜と組み合わせることにより大型のコンデンサーを作ることが可能であり,コロナ放電を生じにくい特性をもつことから,主として高耐圧の大型コンデンサーに使用されている。セラミックスとしては雲母(マイカ),アルミナAl2O3,酸化タンタル,酸化チタン,チタン酸バリウム,チタン酸ストロンチウムなどが広く使われている。雲母は高分子膜と同様な長所をもつうえ,εが7.2とかなり大きく,しかも高周波特性が優れているので,大容量のものは作製できない欠点はあるものの,高周波用として広く使われている。…

※「雲母」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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