雷雨(風雨現象)(読み)らいう(英語表記)thunderstorm

翻訳|thunderstorm

日本大百科全書(ニッポニカ) 「雷雨(風雨現象)」の意味・わかりやすい解説

雷雨(風雨現象)
らいう
thunderstorm

電光雷鳴を伴う風雨現象。強い上昇気流によって生じた積乱雲雷雲)に伴っておこる。強い上昇気流をおこす原因の違いによって熱雷界雷渦雷(からい)の呼び名があるが、実際にはこれらの原因が複合する場合が多い。

(1)熱雷 夏季日射によって地面が強く熱せられると同時に、上空に寒冷な空気が流入すると、下層の空気は強い浮力を与えられて上昇する。

(2)界雷 寒冷前線の突入によって暖気が急激に上空に押し上げられる。

(3)渦雷 低気圧や台風では風が周辺から吹き込むので中心部で上昇気流となる。

 雷雨の大きさは普通、水平方向に数十キロメートル、鉛直方向には対流圏の頂部(圏界面という。高度は10~15キロメートル)に達する。この高度での気温は零下20℃以下であるから雲粒は氷結している。積乱雲の後部では激しい降雨に引きずられて冷気が下降し、雷雨時によく経験される一陣の冷風となる。またこのため雲の下に冷気塊がたまるので、局所的な高気圧部ができる。これが雷雨の通過時には一時的な気圧の急上昇となり、自記紙上に鼻の形に似た曲線を描くので、これを「雷雨の鼻」という。

 関東地方の夏季には北西の山岳部に熱雷が発生し、南東に進行するのが普通である。これは、積乱雲の下にできた冷気塊が地形の影響を受けて川沿いに進むためと考えられている。移動速度は普通毎時20~40キロメートルであるが、ときとして毎時50キロメートルを超えることもある。界雷は寒冷前線に沿って何個も発生するので、全体としてみれば熱帯より広い幅にわたり、数百キロメートルも進行する。

 雹(ひょう)も雷雨に特有な現象で、とくに春雷に多い。直径数センチメートルの氷の塊で、農作物に大きな被害をもたらす。落雷のほかのもう一つの雷災である。

[三崎方郎]

『高橋劭著『雲の物理――雲粒形成から雲運動まで』(1987・東京堂出版)』『小倉義光著『お天気の科学――気象災害から身を守るために』(1994・森北出版)』『小倉義光著『メソ気象の基礎理論』(1997・東京大学出版会)』『北川信一郎著『雷と雷雲の科学――雷から身を守るには』(2001・森北出版)』『大野久雄著『雷雨とメソ気象』(2001・東京堂出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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